大学入試改革「調査書重視」というナゾな指針が教育現場に与える混乱

運用の仕方も必要性もよく分からない…

2020年度の高校3年生から対象となる大学入試改革。目玉の一つである大学入学共通テストで導入される英語の民間試験については、9月25日、東京大学が入試で成績の提出を必須としない方針を決めた。この東大の判断は他の大学にも影響を与える可能性がある。受験まで時間がない中で、改革の方針がぐらつく状況は、受験生にとっては迷惑な話だろう。

しかし、英語の民間試験と同等かそれ以上に、大学入試改革で受験生や高校の教員を戸惑わせているものがある。それは「調査書の活用強化」という方針だ。

英語の民間試験などの話題に隠れて、一般的にはあまり知られていないが、入試改革の一環として、入試の際、高校から提出される「調査書」の評価をこれまでよりも重視して合否を判断するようになる、という方針を文科省が決定した。

「調査書」の活用が強化されることによって、調査書に記述する量が現在の倍以上になり、受験生と教員の負担が激増することが懸念される。加えて、その調査書がどのように入試で活用されるのかなど、現時点では決まっていないことも多い。「調査書」強化の問題点を探ってみる。

 

活動記録の管理に頭を悩ます教員

「生徒が書いた内容に嘘などが入っていないか、確認するのが結構大変です」
「仕事量が増えましたが、この作業がどう生かされるのか現時点では分かりません」
「授業の中に、この調査書を記録をする時間を作らないと、生徒たちは自主的には書かないでしょう」

高校の教員に、この調査書の強化について話を聞いてみると、一様にこんな答えが返ってくる。特に彼らの頭を悩ませるのが、大学入試改革1期生となる現在の高校1年生から取り組んでいる「eポートフォリオ」の運用方法だ。

「eポートフォリオ」とは、部活や課外活動など、生徒一人一人の活動の記録をデジタル化して残すインターネット上のシステムだ。生徒が自分でスマホやタブレット、パソコンなどから記録し、教員がその内容を承認する仕組みになっている。

なぜこの「eポートフォリオ」が登場したか、少し説明が必要だろう。

これまで生徒の「調査書」は1枚の紙が基本だった。表に学習の記録、裏に部活動や資格、出欠の記録などを教員が記載していた。学校によって違いはあるかもしれないが、3年生の担任が受験シーズンの少し前に、生徒毎の3年分のデータを入力するか、1年次から担任が毎年データを埋めていくのが基本だった。

それが、2020年度からは枚数の制限がなくなり、1枚目の表裏に学習と部活の記録を書き、2枚目以降はボランティアや留学経験などの課題活動を詳しく記入しなければならなくなる。

これまで以上に学習や課外活動の記録を記入するとなると、教員に多大な負担がかかる。そこで高校生活を日常的に記録し、入試の出願の際にデータを整理して調査書を作る助けになるのが、「eポートフォリオ」というシステムだ。入試改革に併せて、後述する大学コンソーシアムや民間企業がシステムを作成。各高校はこれを導入し、生徒がこのシステムに活動記録を入力し、教師が確認、承認していく、というわけだ。

しかし、驚くことに「eポートフォリオ」によって作られた調査書が、大学入試でどのように評価されるのか、ほとんどの教員は知らないのだという。知らないままに、改革元年に向けて走り出しているのが現状だ。労力は増えているが「何のためにやっているのかまだよくわからない」(東京都内の高校教員)というのが、正直なところだという。

どのように評価されるのかを教員が知らない理由は、その評価の方法が、ほとんどの大学で決まっていないからだ。

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