ウォレスによるオラウータンの標本 Natural History Museum(英)収蔵/photo by gettyimages

進化論の元祖ダーウィンとウォレス、どちらが偉い?

いい人なのに残念だったのは……

苦労人で性格のいいウォレス

私はウォレスが好きだ。ダーウィンとほぼ同時に自然選択を発見した、あのアルフレッド・ラッセル・ウォレス(1823〜1913)である。

困難な境遇にあったにもかかわらず、成し遂げた業績もすごいし、人間的にもとてもよい人だ。ウォレスのことを詳しく知れば、みんなウォレスが好きになるのではないだろうか。

【写真】アルフレッド・ラッセル・ウォレスの肖像画
  アルフレッド・ラッセル・ウォレス(Alfred Russel Wallace、1823〜1913年) photo by gettyimages

イギリスのウェールズで生まれたウォレスは、7歳のときにグラマースクールに入り、7年間教育を受けた。彼が受けた正規教育はこれだけで、生物学の専門教育は受けていない。ウォレスの家は裕福ではなかったので、彼は働きながら図書館で本を読んだ。また、才能あふれる人々との、幸運な出会いもあった。

そうして、博物学を独学で学んだウォレスは、25歳のときに南米のアマゾンに渡った。そこで昆虫や鳥などを採集して標本を作り、イギリスに売る仕事を始めた。

しかし、ウォレスの人生は、順風満帆というわけにはいかなかった。遅れてアマゾンに来た弟は黄熱病で死に、ウォレス自身もマラリアに苦しめられた。29歳になると、ウォレスは膨大なコレクションを船に積んで、イギリスに向かった。ところが、その船で火災が起き、コレクションもろとも沈んでしまう。ウォレスは10日ほどボートで海を漂流した後、他の船に救助され、命だけは助かった。

【写真】ウォレス作甲虫の標本
  ウォレスがつくった甲虫の標本 photo by gettyimages

それにも懲りずに、ウォレスはマレー諸島に旅立つが、貧乏暮らしはまだまだ続く。ずいぶん、ダーウィンとは境遇が違う。何しろ、ダーウィンは、生まれてから死ぬまで、お金のために働いたことが一度もないのだから。

しかも、少し不公平なことをダーウィン(の友人たち)にされても、ウォレスはまったく不平も言わず、いつもダーウィンを尊敬し続けた。何だかとてもよい人なのだ。