米中の報復関税合戦で、中国人は好物・豚肉を食べられなくなる

これが輸入食糧依存国の弱みだ
北村 豊 プロフィール

不安が転嫁か、飛び交う食糧倉庫自焼の噂

話は変わるが、7月6日に米国産大豆に25%の追加関税が発動されてから半月後の7月23日、中国政府国務院は『全国政策性食糧在庫の数量と品質調査に関する通知』を公布して、全国各地の国家倉庫に備蓄されている食糧の数量および品質の調査を行う旨を通知した。

この備蓄在庫調査は定例のものと言えるが、今回は米国産食糧の輸入が追加関税で規制されることによって、国内が受ける影響を検討する材料を得る目的の可能性もあるように思える。

この通知から6日後に当たる7月29日の午前8時頃、吉林省洮南市(とうなんし)にある大通食糧備蓄倉庫の1号庫で火災が発生した。同倉庫には2015年産の食糧9417トンが備蓄されていたが、鎮火後の調査では食糧の40トンが焼失し、540トンが水濡れし、合計580トンの食糧が損害を受けた。

この火災のニュースが報じられると、各地の食糧備蓄倉庫で火災が発生したという噂がネット上で飛び交った。しかし、官製メディアはネット上に提起された火災は全て過去に発生したもので、新たな火災は発生していないと噂を全面否定した。

一方、大通食糧備蓄倉庫の火災は上述した備蓄食糧の調査と関連して、備蓄食糧の横流しなどの不正行為を隠蔽するために行われた放火ではないかと疑われたが、これも公式に否定された。

こうした疑念が提起されるのは、過去に行われた食糧備蓄倉庫の調査で、調査の実施直前に不正隠蔽のために放火が行われた事実があり、国民が備蓄食糧の在庫量に不審を抱いていることの現れである。

 

豚コレラがとどめとなるか

ところで、中国では8月3日に遼寧省で「豚コレラ」に感染した豚が発見されたのを皮切りに、9月20日までの時点で黒龍江省、吉林省、内モンゴル自治区、河南省、安徽省など計12の省・自治区・直轄市で豚コレラに感染した豚が確認されている。

豚コレラは豚のウイルス性疾病で、伝染力が強く、致死率も高い。豚コレラの蔓延によって消費者が豚肉を敬遠することになれば、養豚業者は豚の飼育数を削減するだろうし、上述したように脱脂大豆の数量不足によって飼料が高騰すれば、飼育数の減少傾向はさらに進むだろう。

豚飼育数の拡大は一朝一夕にできるものではなく、飼育数を適正に回復するには数年を要する。

今後、輸入大豆の供給不足に直面する中国にとって、豚コレラの流行はまさに「泣き面に蜂」と言えるが、自ら下した米国産大豆に対する25%の追加関税措置により、中国は大きな犠牲を強いられることになりそうだ。

繰り返しになるが、事態は食肉価格高騰の方向に動き出している。そうなれば対米強硬の中国政府に、人民の不満は集中することになる。「食」に対する不満は、何よりも政治的に深刻な影響をもたらす可能性が高い。

なお、最近の報道によれば、今年の冬に中国で消費される大豆は少なくとも3000万トンと予測されるが、南米からの輸入量は1000万トンに止まり、2000万トンの大豆が不足するという。

米国産大豆1つを取り上げても、米中貿易戦争は中国にこれほどの影響を与えているのである。

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