米中の報復関税合戦で、中国人は好物・豚肉を食べられなくなる

これが輸入食糧依存国の弱みだ
北村 豊 プロフィール

輸入食料に依存した食生活向上

中国税関の統計によれば、2017年における米国からの“糧油(穀物・油)”類の輸入総量は3550万トンであり、このうち大豆は3285万トンで全体の92%を占めていた。

また、2017年における中国の大豆輸入総量は9552万トンであり、国別輸入量は、ブラジル:5093万トン、米国:3285万トン、アルゼンチン:658万トン、ウルグアイ:257万トン、カナダ:205万トン、ロシア:49万トンなどであった。

米国産大豆は長年にわたって中国の大豆輸入の主流であったが、近年南米産大豆、特にブラジル産大豆の生産コストが低減したことにより、供給首位の座をブラジル大豆に明け渡した。

しかし、米国産大豆が中国の輸入大豆総量に占める割合は依然34%と大きく、25%の追加関税によってコストが上昇したとしても、中国が代替供給国を確保することは容易ではない。なお、中国の大豆自給率は20%に満たない。

中国の農業サイト「基因農業網」が8月8日付で次のように報じた。

すなわち、今年、中国の大豆総需要は1.54億トンであるのに対して、世界の大豆生産量は4.85億トンであり、中国は世界の大豆の32%を消費している。中国の大豆輸入量は1.29億トンに達すると予想されるが、世界の大豆貿易量は2.1億トンであるから、中国はその61.4%を占める。

2001年11月に中国が世界貿易機関(WTO)へ加盟した後に、中国の大豆輸入量は815%増加した。中国の人口増加を加味して考えても、この数字は中国人の生活水準が上昇したことを意味する。

それは、輸入大豆のほぼ100%が大豆油の抽出に使われ、油分抽出後の“豆粕(脱脂大豆)”が豚、牛、羊、鶏などの家畜に植物性蛋白質を供給する重要な飼料になるからで、その飼料で育てられた家畜は食肉に加工されて国民の食卓に供される。

中国の2017年における飼料用脱脂大豆の需要は6700万トンで、脱脂大豆総需要の98%を占め、そのうち養豚飼料に用いられる脱脂大豆は49%を占めている。

脱脂大豆のコストは飼料総コストの1/4を占めるので、中国へ輸入される米国産大豆に25%の追加関税が課せられると、脱脂大豆の価格も大きく値上がりすることになり、必然的に豚、牛、羊、鶏などの食肉価格が上昇する。

米国に代わる大豆供給国として考えられるのは、南米のブラジルとアルゼンチンだが、今年の南米は旱魃で大豆生産が落ち込んでいる。このため、アルゼンチンは米国産大豆を100万トン買い付けたとの情報があり、また、ブラジルも米国産大豆を100万トン買い付けたと言われている。

また、中国が米国産大豆の代わりにブラジル産大豆の輸入量を増大すると予想して、ブラジル側の売値は大幅に高騰している。

 

近づく大豆危機の足音

中国の主要な大豆生産地は東北地区の3省1区(黒龍江省、吉林省、遼寧省、内モンゴル自治区)だが、農民の大豆生産に対する意欲はそれほど強くない。

中国政府は2018年も東北地区の大豆生産者に対する補助金支給を継続したが、2017年における国産大豆の収益率はその他の作物に比べて低く、販売も思わしくなかったことから、2018年における中国国内の大豆作付面積は小幅ながら減少した。

具体的に言えば、2018年の大豆作付面積は約1.15億ムー(約7万6666平方キロ)で、前年比で200万ムー(約1330平方キロ)減少して、その減り幅は1.7%であった。北海道の面積が8万3424平方キロメートルであるから、中国の大豆作付面積は北海道より一回り小さいということになる。

なお、8月時点では今年の大豆収穫量は144億トンで、前年比で2.5億トン減産するものと予想されていた。

しかし、東北地区の黒龍江省と内モンゴル自治区では9月初旬に思いがけなく霜害に見舞われ、当初の豊作から減産に予測の転換を余儀なくされた。9月10日時点では、吉林省には霜害は出現していなかったが、早晩、大豆の収穫前に霜害に見舞われるものと予想される。

追加関税による米国産大豆の輸入量減少に加えて、国産大豆の生産量が大幅に減少すれば、中国国内における大豆需給は一層逼迫し、家畜飼料用の脱脂大豆が不足して、価格が高騰することは目に見えている。

そうなれば、食肉の供給が需要に追い付かず、価格高騰によって国民の不満が中国政府に向けられることになる。げに「食い物の恨みは恐ろしい」のである。

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