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米中の報復関税合戦で、中国人は好物・豚肉を食べられなくなる

これが輸入食糧依存国の弱みだ

わずか5時間がもたらした40万ドルの損失

7月5日正午12時、リベリア国籍の貨物船「ピーク・ペガサス」は2300万ドル相当の米国産大豆7万トンを積んで、中国遼寧省の大連港を目指して韓国済州島の北を全速力で航行していた。同船は7月5日の午後4時に大連港へ到着する予定だったが、航行中に遅れが生じたため、新たな到着予定は7月6日午前9時になっていた。

ピーク・ペガサスの船長は、これなら7月6日正午以降に始まる中国による340億ドル分の米国製品に対する制裁関税の適用を回避できると考えて胸を撫で下ろしたが、最終的にピーク・ペガサスが大連港に到着したのは7月6日午後5時頃で、25%の輸入関税を追加徴収する制裁関税の適用が始まった後だった。

制裁関税の適用前に大連港へ到着できなかったピーク・ペガサスは、大連港への接岸を諦め、港外の海上に投錨して停泊し、1カ月間を波に揺られて無為に過ごした。

 

ピーク・ペガサスに動きがあったのは、8月11日に大豆の買い手である中国儲備糧管理総公司(シノグレイン)傘下の搾油・精油会社「中儲糧油脂公司」が25%の追加徴税額である600万ドルの支払いを受諾したからだった。

8月13日、大連港の埠頭に接岸したピーク・ペガサスは、大豆7万トンの荷降ろしを完了して、2カ月近くに及んだ長い任務を終えた。

ピーク・ペガサスはJ.P.モルガン・アッセト・マネージメント(J.P. Morgan Asset Management)の所有で、荷主はオランダに本社を置く貿易会社ルイス・ドレイファス(Louis Dreyfus Company)であった。

ルイス・ドレイファスは、1日1万2500ドルの傭船料を船主のJ.P.モルガンに支払う義務があり、ピーク・ペガサスの大連港到着が5時間遅れたことにより40万ドル以上の余分な出費を余儀なくされた。

米国政府は6月15日に中国による知的財産権侵害に対する制裁措置として、米国が中国から輸入している中国製品500億ドル分に対して25%の追加関税を課すと発表し、その第1弾として7月6日に340億ドル分の中国製品に制裁関税の適用を開始するとした。

一方の中国政府は6月15日に米国と同規模・同等の追加関税措置を取ると声明を発表して、米国が7月6日に制裁関税を発動すれば、同時に340億ドル分の米国製品に追加関税を課すと言明した。

中国政府が米国政府に対する報復として7月6日に追加関税25%を適用したのは545品目の米国製品であったが、その中には主要な輸入品目である大豆が含まれていた。

中国では大豆に対する輸入関税は従来3%であったから、25%の追加関税が適用された後の輸入関税は28%に増大した。この追加関税を免れようと7月6日正午前に大連港への到着を急いだのが、上述したピーク・ペガサスであった。