設計者が明かす、カープ3連覇を生んだマツダスタジアムの秘密

「また行きたくなる」球場の思想
仙田 満

球場の波及効果

当初は、全天候型のドーム球場にしたいという声もあったが、それを実現させるためにはかなり大きな敷地を必要とするため、ヤード跡地の敷地全体の11haを市が所有することになる。財政事情がきびしい広島市には到底できそうもなかった。

一昔前、野球の本場・アメリカの球場もドーム型が増えたが、昨今、開放型や天然芝などへの回帰が起こっている。それを考慮したのだろう。天然芝の球場にするという条件も定められた。

今、球場の敷地は5haのみで残りのうち4.4haは民間企業である三井不動産に売却し、同社が管理運営している。これも、球場の維持コストをまかなうために必要な施策であった。

新広島市民球場が稼働してから、広島カープの奮闘もあって、年々、予想を超える多くの人たちがこの場所に足を運ぶようになり、駅周辺の止まっていた開発プロジェクトがすべて動き出した。

地元のシンクタンク中国電力エネルギア総合研究所は、広島カープと新広島市民球場が7年間、毎年200億円前後の経済効果を出していると発表している。商業施設がたくさん生まれ、ホテルもどんどん立ち、「いま中国・四国地方で経済的に一番元気なのはこのエリア」といわれている。その反対に、旧球場のあたりが少しさびしくなっているのは残念なことだ。

私は、旧球場の跡地の活用方法として、事業コンペとして「世界こども大使館村」の設置を提案した。残念ながらそれは受け入れられなかった。

広島の聖地に、世界の国々がスポンサーとなって、地球の未来を担うこどもたちのための施設を造るという構想である。世界的な聖地をもつ広島にふさわしいアイディアをと考えたのだが。今もその思いを、私はまだあきらめられないでいる。

『人が集まる建築』(講談社現代新書)より構成、一部加筆しました。写真は刊行当時のものです。