朝起きたら、買ってた卵からヒナが次々と孵化してきた! どうする?

そんなとき、鳥と仲良く暮らす方法
上田 恵介 プロフィール

「それはやっぱり、『刷り込み』を利用することですね」

「刷り込み」は、動物行動学者であるコンラート・ローレンツが見出した現象で、ヒナが孵化後の一定期間に見た「動くもの」や「声を出すもの」を親だと認識してついてまわる習性のことだ。有名なので、知っている人も多いだろう。

飼い鳥を手乗りにしたい場合は、この習性を利用することが多い。ヒナのうちに人間が直接餌を与えることで、親のように認識させて、人間に慣れさせるのだ。

「ヒナにしてみれば、餌をくれる相手が鳥の形をしてなくても、適当なタイミングでいつも餌を持ってきてくれるものを親だと認識するんだと思いますね。

ただ、刷り込みの強さは、鳥の種類によって幅があるようで、カモやガンなどは特に強いようです」

このように、刷り込みによって、人に触られるのを嫌がらない鳥の場合、鳥自身の足やくちばしでは掻きづらい、首の横や後頭部などを撫でてあげると、よろこんで撫でさせてくれるようだ。

うずら『うずらのじかん』①より

ちなみに、ヒナのときに人が餌付けしなかった鳥は、人間に対して警戒心を持つようになるため、手乗りにはなりづらいとされている。成鳥になんとかなついてもらうことはできないだろうか?

「成鳥の場合はなかなか難しいかもしれませんね。そもそも鳥は『人になつく』という資質に関して、選別を受けてきていないから」

たとえば、人なつっこい動物の代表格である犬。その起源である古代オオカミは、ファミリーで鹿などの大型動物を狩るために、社会的コンタクト能力を備えていた。常に相手の動きや表情を見て、自分はどう動くかを決めていたわけだ。

こうした古代オオカミの資質を受け継いだ犬のうち、そのコンタクト能力を人間に振り向けてくれた犬を、我々は選別して長期にわたり保護してきた。その結果が、現在ペットとされているような「人になつく」犬たちだ。

「しかし鳥は、犬と違って『仲間の気分を察する』という資質に関して、人間の選別を受けてきていません。

古来より人間の楽しみのために飼われてきた飼い鳥──たとえば、インコやウグイスが受けてきた選別は主に『鳴き声』に関してですし、ブンチョウなどが受けてきた選別は『見た目のかわいらしさ』に関してです。

そういう意味で言うと、現在、ペットとして飼われているような鳥も、なつくようなものじゃないんですね。ですから、刷り込み時期を逃してしまうと、けっこう難しいかもしれないです」

脳が大きいカラスなら…

それでも成鳥と仲良くなりたいのであれば、やはり餌で釣るのがもっとも効果的だそうだ。

餌をやるときは、いつもと同じ時間帯に、なるべく似たような格好で、毎日餌をやり続ける。そのときに脅かしたりしなければ、成鳥であっても『この相手は餌をくれるヤツ』『怖くないヤツ』と認識してくれる可能性は高くなるという。

「ただ、成鳥してから人になつく種は、かなり賢いと言えるでしょう。『こいつと一緒にいたほうがいいな』という因果関係を判断できる知能が備わっているということですから。

そういう鳥はだいたい体が大きくて、相対的に脳も大きいんです。頭がいいと言われているインコ類やカラスなども、体が大きいですよね」

脳が大きい鳥に関しては、彼らがもともと持っている能力をうまく誘導できれば、かなり複雑なことも覚えてくれるという。

最近、フランスにあるヨーロッパ中世のテーマパーク「ピュイ・デュ・フー」で、ゴミ清掃員として、6羽のカラスが採用されたことが話題になった。

パーク内には、タバコの吸い殻などを拾って入れると、餌が出てくる専用のゴミ箱が設置されている。

学習能力が高いカラスであれば、ゴミを入れると餌が出てくることを理解する。そのため清掃員として活躍ができるというわけだ。

この件に関してはカラスの健康被害について指摘もされているが、たとえ成鳥であっても、その習性を理解して活用すれば、それなりに親しく暮らすことができそうだ。

他にも、脳が大きく頭のよい鳥としては、アヒルやカモメなどの水鳥が該当するという。ただ、カラスやカモメなどの大型の野鳥は顔がちょっと怖い。ゆえに、仲良く暮らしたいかと問われると、戸惑う人は少なくないだろう。また、自治体によっては生態系への影響などを考慮して、野鳥の餌付けや飼育が禁止されているところもある。

ちなみに、もうお忘れかもしれないが、この記事のそもそもの目的は、万が一買ってきた食用卵が孵化した場合に備えようというものだ。

だとしたら、孵化されても暮らすのがちょっとしんどい鳥の卵は家に持ち帰らないか、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫に入れて卵の中に胚が発生しないように冷やすことが重要だ。