2018年のイグ・ノーベル賞授賞式。堀内朗氏が実演を始めると会場が盛り上がった Photo by Michael Dwyer / AP

こちらは12年連続日本人受賞! 奥深き「イグ・ノーベル賞」の正体

「イグ」がないほうにも負けない価値

日本中、いや世界中がノーベル賞に大きな関心を寄せるなか(ここはひとつ心を強く持って)あえてイグ・ノーベル賞を掘り下げてみたい。

「裏のノーベル賞」が教えてくれる、日本人の強みとは。そして、日本の研究環境は、これからもユニークな研究を生み出していけるのだろうか──。

現在、東京ドームで開催中の「イグ・ノーベル賞の世界展」の内覧会に招かれた本賞の創設者や、過去の日本人受賞者の話を交えながら、イグ・ノーベル賞の謎に迫る。

予測不能な「イグ」の正体

京都大学の本庶佑氏が2018年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。日本人にとっては、今年も大変喜ばしい“ノーベル・ウィーク”の幕開けとなった。

アメリカのジェームズ・アリソン(James P Allison)氏と本庶氏は、免疫の働きを抑える物質を発見し、それをがんに対して免疫が働くようにする新たな治療薬の開発に応用した功績が評価された。

本庶氏も有力候補者の一人として以前から大きく注目されていたように、ノーベル賞はその発表前から予想の動きが盛り上がる。

論文の引用数や、ノーベル賞の前哨戦とされる賞の結果、「一つの賞で同時受賞できるのは3人まで」といった受賞条件などから絞り込み、“推し研究者”を挙げることができる。

一方で、まったくと言っていいほど予測不可能なのが「裏のノーベル賞」ことイグ・ノーベル賞だ。

 

こちらは本家より一足先に、9月に授賞式が行われ、今年も堀内朗氏が医学教育賞を受賞し、日本人としては12年連続の受賞となった。

この賞、なんと12年も日本人の受賞が続いていることで、“表の”ノーベル賞とまではいかないが、日本のメディアでも取り上げられるようになってきた。

ただ、私も含めて多くの人が、まだ本当のイグ・ノーベル賞の「おもしろさ」に出合えていないのではないだろうか。

イグ・ノーベル賞(Ig Nobel Prizes)は、ノーベル賞のパロディとして知られ、否定的な接頭語の「ig」をつけた造語で「イグノーブル(ignoble); 下品な、恥ずべき」と掛け合わせたジョークだ。

その善し悪しについては個人の判断に委ねられるが、単にお遊びだと片付けてしまうのは、ちょっともったいない。些末なものだと軽視するのも、この賞を知ってからでも遅くはない。

本家本元“表の”ノーベル賞は、ダイナマイトの発明家であるアルフレッド・ノーベルによる、自身の遺産を「人類のために最大の貢献をした人々に与える」という遺言をもとに、1901年に創設された。

物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞の6部門がある(ただし遺言書に経済学賞についての記載はない)。

一方、イグ・ノーベル賞は1991年に、『ユーモア科学研究ジャーナル』(Annals of Improbable Research; AIR)の設立者で編集者のマーク・エイブラハムズ氏によって創設された。

Ig Nobel イグ・ノーベル賞創設者のマーク・エイブラハムズ氏。2003年の授賞式にて撮影 Photo by Getty Images

授賞部門は、生物学賞、医学賞、物理学賞、化学賞、平和賞、経済学賞が基本ではあるが、その他にも、心理学賞、公衆衛生賞、栄養学賞など、その数40種類以上にも及んでいる。

それは、この賞が部門ありきではなく、まず授賞対象者を決定し、その業績に応じてふさわしい賞を決めているからだ。

それゆえ、イグ・ノーベル賞の受賞予想を命中させるのは、極めて困難なこと(というか無謀)だ。

驚くほど柔軟に(自由すぎるけれど)時勢もふまえて、授与すべき人が選定されているからである。