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朝倉祐介氏語る「お金のリアルを感じて、人生の価値を最大化しよう」

すべての経験には意味がある

今、『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社)という本が、骨太の内容ながら累計6万5000部と売れている。日本企業が停滞したのは、目先の売上や利益を上げることを目的視する「PL脳」に蝕まれているから。その呪縛を解き、企業価値を最大化するための長期的目線に立った考え方が「ファイナンス思考」だと著者の朝倉祐介氏は言う。

朝倉氏は、生きる過程でいかにファイナンス思考を体得するに至ったのか。後編となる本記事では、東大在学中に起業、マッキンゼーを経てさらにスタートアップに戻ったなか培われた考え方を「お金」を縦軸にして語っていただいた。

取材・文/堀容優子(ようこ) 撮影:白井智

お金は重要だが絶対的なものではない

大学時代になかば遊び感覚で友人と起業しましたが、卒業後は就職する道を選び、マッキンゼーに入社しました。騎手になるという明確な目標が断たれた後、当時大学生だった私には、同じくらいの情熱を注ぐことができる仕事を見つけることができませんでした。

その点、コンサルティングファームというのは、ある種のビジネススクールのようなものであり、「モラトリアムの延長」のような場です。実務を通じて幅広い業種に接することで、自身の興味や向き不向きを見極められるかもしれないといった点に期待して就職しました。その点では給料以上に、そこに身を置くことで広がる可能性や、得られる経験の幅に魅力を感じました。

お金というのはとても大事なものですが、決して一番重要なものではありません。自分自身の幸せを築くうえでは、あくまで相対的なものであって、1つの要素にすぎないと思っています。それは就職先選びでも然りです。

特にやりたいこともなかった私にとって、「業務経験を通して、自分がより大きな人間になれる可能性が高い」という点が、会社選びの一番のポイントになりました。他の職場では得づらい経験を積むことで、自分の価値を高めると同時に、自分の人生をより充実したものにできるんじゃないかと思ったのです。

ただ、マッキンゼーに在籍していた頃は、ともすると「お金は天から降ってくるもの」といったサラリーマン的な感覚に陥ってしまいました。

前編でも述べたように)父から「お金を天から降ってくるものじゃない」と言われて育ったにもかかわらず、勤め人になるとどうしてもそのことを忘れてしまうんですね。月末25日になったらお金が振り込まれていて、銀行口座の残高が増えているのが当たり前、という感覚。

ある意味、お金というものに最も現実感を持てなかったのが、マッキンゼー時代だったかも知れません。そんなにお金を使うこともないし、日々の生活は何も考えなくても凌げましたからね。

 

資金繰りで嫌というほど味わったヒリヒリ感

再び、お金を「自分ごと」として切実に感じるようになったのは、マッキンゼーを辞めて、ネイキッドテクノロジーという学生時代に仲間と作った会社に戻ってからのことです。

自分が会社を経営するようになると、当然ながら社員に給料を払わなくてはいけません。

投資が先行する事業でもあり、キャッシュは目減りする一方だったこともあって、給料日が憂鬱で憂鬱で仕方なくなりました。キャッシュ残高が減るのを食い止めるために、どうすれば自分自身に支払う役員報酬や立替経費の支払いを減らすことができるのか、といったことまで考える始末です。

頭の中で会社と自分が一体化し、切り離すことができなくなり、給料をもらう立場と払う立場ではこんなにも感覚が違うものかと思い知らされました。