先日も、母親が10歳から8カ月までの子ども3人と無理心中をはかったと思われる痛ましい事件が起きた。

虐待問題は、親を処罰すれば終わりというものではない。もちろん傷害や殺人に至った場合処罰されるのは当然だし、親をただ可哀想と言っていいものでもない。一番大切なのは、虐待を少しでも減少させたり、未然に防ぐことに他ならない。

そのために「親の回復ケア」を18年間続けているのが、森田ゆりさんだ。森田さんは自ら開発した「MY TREEプログラム」という回復プログラムで、現在1000人以上の親子を救ってきた。なぜ効果があるのか、そして私たちがこれからできることはどんなことだろうか。

虐待に至った親たちが語った本音

去る8月18日に大阪府高槻市で「虐待・親にもケアを」というテーマで、虐待に至ってしまった親の回復に取り組むMY TREEプログラムの 全国フォーラムが開かれました。

厚労省や児童相談所の管理職の人々、児童福祉司や心理士、虐待された子どもを預かる児童養護施設の所長や里親たち、このプログラムを修了した親たちなど250人近くが全国から集まり、熱のこもった5時間を共にしました。

全国フォーラムで親子の関係性を氷山で示し説明する森田さん 

この日、参加者の心を最も深く揺さぶったのは、MY TREE プログラムを修了した親二人が一人ずつ壇上に立ち、自分はなぜ虐待に至ってしまったのか、そしてどのようにしてそこから抜け出し、どうやって今の幸せな家族の日々を紡ぐに至ったかを語る言葉の深さでした。

「この次は殺してしまうかも」

その一人、Tさんは8年前にMY TREE プログラムを修了しました。当時2歳半の息子を本気で足蹴りし怪我させてしまった時、この次は「殺してしまうかも……」との不安から、泣きながら相談窓口に電話しました。児童相談所から連絡が入り、虐待する親の回復プログラムMY TREE の受講を勧められました。

MY TREE プログラムは虐待の原因探しをして、私の悪いところを見つけて治すというそれまで私が受けて来たものではありませんでした。そこには、スタッフの優しい笑顔と仲間の涙、熱心に話を聴く安心できる場がありました。

仲間の本当の名前は知りませんが、彼女達が語る表情、話、空の色、飲み物さえも私の一部のように感じ、心から安心できるこの空間から私は、今まで誰にも語らなかったことも、ここでは出してみようという勇気をいただきました」(『虐待・親にもケアを』森田ゆり編著 築地書館2018年より)

かつて受けた性暴力やDVやそのほかさまざまな傷つき体験のトラウマを抱え、かつ腰痛や肺炎などの身体的不調を持ち、当時は外科病棟の看護師としての激務もこなしながら、TさんはMY TREE プログラムで得た自己肯定感を支えに、人と率直に心を交わすコミュニケーションを使いながら、子どもたちとの関係を変えました

それから8年がたち、長男は23歳、2児のパパとなり、Tさんはフランス人と結婚し、今は看護大学院で勉強しながら仕事と家事を続けています。その日、会場には夫、当時2歳で今10歳の息子、長男は2児を連れて、Tさんの話を聞いていました。