ヴィッセル神戸が進める「バルセロナ化」最大のキーマンはこの人

情熱が違う
二宮 寿朗

レシャックチルドレン

監督を退任した吉田もまた、“レシャックチルドレン”の一人。三浦SDはピッチ外の動きと併行して、監督の吉田とも常にコミュニケーションを取ってポゼッション率やパス成功率を重視するなどピッチ内の「バルセロナ化」にも深くかかわってきた。

イニエスタが加入したことで、それは一気に加速するようになる。三木谷会長に進言したスピード感を目の当たりにする。

「瞬時にパスコースを生み出し、相手にとって一番嫌な選択肢をするのがイニエスタなんです。技術はもちろんのこと、判断がとにかく正確で、とにかく速い。日本人に近い体格を持つ彼は、世界を手玉に取ってきました。当然ですけど、選手たちは彼と一緒に練習をやっていくだけで鍛えられていきます。若手だけじゃないですよ、ベテランも含めてみんなです」(三浦SD)

プロ1年目の郷家友太を筆頭に、若い力がメキメキと伸びているのは事実。中断期間にはチームのスタイルに合致すると踏んでJ2から獲得した古橋享梧、大﨑玲央も存在感を発揮している。

とはいえ、改革はそう簡単にはいかないものだ。チームは一時、4位まで浮上したものの、現在は4連敗中(9月23日時点)。第27節のアウェー浦和レッズ戦で0-4と大敗を喫して順位を9位にまで下げた。リージョ監督は就労ビザを取得してから指揮を執ることになるため、新体制移行の難しさにも今は直面している。

 

ただ三浦SDは「バルセロナ化」を粛々と進めているわけではない。

彼はクラブのレジェンド。2005年にはキャプテンとしてJ2降格を味わい、翌シーズンも先頭に立って1年でJ1復帰を果たした。

クラブが強くなっていくには、選手のパッションも大切になることを彼は分かっている。今季、浦和から獲得したベテランの那須大亮に対して「試合に出ようが出まいが、自分の姿勢をずっと出し続けてほしい。それがチームのためになる」と伝えている。那須は多くのクラブで優勝を経験しており、勝つチームとは何かをよく分かっている。経験の還元を、求めたのだ。

8月中旬、イニエスタをはじめ新加入した選手たちの歓迎会が神戸市内のレストランで開催された。締めの言葉を託された那須は、選手たちに「このチームには輪がまだまだ足りないと思う。強いチームになっていくには輪が必要」と訴えたという。苦しいときのベテランの重要性。三浦SDの思いが、熱いベテランの言葉を引き出した。

「バルセロナ化」と優勝できるチームへの「強靭化」。

三浦SDはこう語っていた。

「国で言えばスペインやメキシコのスタイルが日本には合うし、参考にしたほうがいいとずっと思ってきました。考える、規律を守る、器用なところ(は共通している)。そういったことをひっくるめて、目指す道はここだと僕は思っています」

バルセロナのエッセンスを取り込みながら、神戸スタイルの構築を目指す。イニエスタやリージョ監督よりこの情熱的なSDこそが「バルセロナ化」最大のキーマンである。