患者の体内でゲノム編集(高精度の遺伝子操作)を行い、難病を治療する臨床研究が昨年11月に米国で開始され、今月5日、その途中経過が報告された。
https://www.nature.com/articles/d41586-018-06195-6
それによれば、ゲノム編集治療によって患者(被験者)の症状が悪化するといった副作用は見られなかった。さらに治療の有効性を間接的に示す検査結果も得られたが、それを直接証明するまでには至らなかった。
これを受け、臨床研究を実施した米国の先端医療研究所「サンガモ・セラピューティクス」の株価は、同日22%下落した。しかし専門家の間では、患者のDNAを手術する新型医療(genome surgery)の先駆けとして高く評価されている。
今回、臨床研究の対象となったのは、「ムコ多糖症Ⅱ型(別名ハンター症候群)」と呼ばれる深刻な遺伝性疾患。この病気は、(性染色体の一種である)X染色体上に存在する「IDS」と呼ばれる遺伝子の変異(異常)によって引き起こされる。
IDS遺伝子が異常を来たすと、人体内で生じる有害な多糖化合物を分解するのに必要な代謝酵素(IDS酵素)が肝臓から分泌されなくなる。これにより有害物質が患者の体内に蓄積されるため、心臓や肺など各種臓器、さらには脳が深刻なダメージを受ける。
この結果、「心臓障害」や「呼吸障害」、あるいは「成長障害」や「骨関節障害」など多岐に渡る症状が引き起こされる。