これはスゴイ!メスがペニスを持つとメス同士の競争が激化する

知られざる昆虫の世界へようこそ

メスを巡る競争が破たん

映画『君の名は。』をはじめ、男女の入れ替わりを描く作品は昔から多く存在する。性転換にはさまざまな物語が伴いやすいともいえるが、それは人に限った話ではないようだ。

人間をはじめ、体内受精で生殖活動を行う生物は、ほぼ例外なくオスがペニスをもっている。しかし、昆虫には、オスとメスとで、もっている性器が逆転して進化した種が存在するという。

その虫こそ、体長約3mmの「チャタテムシ」の新種。メスがペニスのような器官を持つこの虫は、交尾の際に、メスがオスに挿入する。しかもメスの「ペニス」の根元には多くの刺が生えており、交尾中にオスをしっかりと拘束。交尾時間は約40~70時間と長く、この間、メスはオスから精子と一緒に栄養の入ったカプセルを受け取り、その栄養で産卵に備える。

 

日本人を含む研究チームが発見し、男女の入れ替わりを描いた古典「とりかへばや物語」にちなみ「トリカヘチャタテ」と名付けられた。同様に交尾器が逆転した仲間は4種いるという。

しかし、一体なぜこんな「とりかえ」が起きてしまったのだろうか。

一般に、メスが生殖に対して払うコストは、オスより大きい。メスの配偶子(卵)はオスの配偶子(精子)より大きいため、オスは多くの精子を容易に作れる。つまり、オスは多くのメスとの繁殖が可能で、交尾に積極的な一方、メスは相手を選り好みする。それゆえ、クジャクの羽のように、オスは異性を巡る競争に勝つための進化を遂げる。

他方で、トリカヘチャタテのメスは、オスから栄養カプセルを貰うので、再交尾のペースが早く、またオスが与える栄養を巡ってメス同士で競争が起こる。それゆえ、メスは交尾に積極的になり性器も進化する一方で、オスの性器は退化したと考えられるという。

トリカヘチャタテの生態を考えると、もはやペニスを「男性器」と呼ぶのもおかしな話なのかもしれない。男と女を分かつものは、案外、そう確固としたものではないようだ。(征)

『週刊現代』2018年10月6日号より