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経営陣か契約社員か…「50代銀行員」転職の大きな分かれ目

銀行員の「転職の損得」3
渡部 昭彦 プロフィール

オーナー系企業をどう考えるか

ここまで年代を1つの軸にし、企業のカテゴリーを外資系、ベンチャー、事業会社の括りとするもう1つの軸からなる、マトリクスの中で銀行員の転職の態様を見てきた。三次元になってしまい分かりにくくなるかも知れないが、ここでもう1つの軸としてオーナー系企業を考えてみたい。

転職市場においてオーナー系企業は大口の需要先だ。口に出す出さないは別としてサラリーマンの青雲の志は社長になることだ。オーナー系企業はその可能性を最初から否定している企業なのだ。大手銀行に就職できる様な優秀な人材が、少なくとも新卒で行くことは考えにくい。

中途採用についても、非オーナー系の大手サラリーマン企業に比べてオーナー系の企業に優秀な人材が集まりにくいのは事実だ。このため、実際にも銀行がシニア対策として出向などの形で人材を多く派遣しているのはオーナー系企業が中心だ。ここでは需給のニーズが一致している。

言い換えれば銀行からの指示による派遣でなく、本人の意思に基づく転職においても、オーナー系企業は銀行員にとって有力な転職先であるということだ。

オーナー系企業の功罪で最も言われるのは「オーナーと合えば重用されるがそうでなければそうでない」ということだ。これは事実だろう。経営学の書物でも分析されているがオーナー系企業の意思決定の速さやダイナミズムは、サラリーマン企業の遠く及ぶところではない。米国の例をあげるまでもなく日本においても、楽天・ユニクロ・ソフトバンクを始めオーナー系企業が紙面を賑わす頻度は明らかに高い。

一方、オーナーであるが故に人事権を含め絶対的な権力を持つことから、経営が独断専行になりがちな点は否定できない。一長一短だ。その中で、銀行員にとって、少なくとも社長を目指していない銀行員にとっては、オーナー系企業は有力な転職先の企業群と考えられる。オーナーから見て、YESしか言わないプロパー社員に全幅の信頼を置くことは難しい。時として世間常識の分かった大人の意見が欲しくなる。その点で銀行員は適任と言える。もちろん言い過ぎてはいけない。その絶妙なバランス感、距離感の取り方こそが銀行員の真骨頂だろう。

オーナー系企業は特に歴史のある会社は生き残る過程で強いブランドを構築しており、それなりに安定経営を続けているのも事実だ。またサラリーマン社長と異なり長期な観点で経営に臨むので成長性があるというのもそうだろう。従って、当たりはずれはあるが、オーナー系企業で末永く働き生涯所得を稼ぐというのもあるだろう。

 

時は来たれり!

ここまでいろいろ書いてきたが、銀行員に無理に転職を進めているわけではない。銀行の仕事は幅広く社会と関わるという点で実に面白い。産業の血液と言われるゆえんだ。従って仕事自体に面白みを感じている人は銀行に残ってやればよい。また、エリートコースに入っていれば「偉くなる」ことを素直に目指せばよい。

その中で認識しておくべきことは、日々の仕事を通じて感じている通り、銀行はメガバンクといえどもこのままでは立ち行かない。少なくともステータスは下がっていく。そして何より処遇は限りなく「普通のサラリーマン化」していくということだ。

人生100年時代とまで構えずとも自身のキャリアを考えれば多くの銀行員にとって、当然転職は視野に入るはずだ。銀行員の悩みは、少なくともこれまでは、多くの場合、処遇が悪化する形での転職を想定せざるを得なかったことだ。自分はともかくとして家族の同意を得づらいのは当然だ。

だがこれからは状況が確実に変わっていく。少なくとも処遇面での銀行員の優位性は薄れていくだろう。であれば「これを奇貨として」考え方を変えてもいいのではないだろうか。

事業会社を中心に企業は優秀な人材を求めている。銀行員へのニーズは間違いなく高い。「三顧の礼」とまでは言わないが、どうせ働くのであれば自分を必要とする組織で働きたいと思うのは当然だ。今更ながらの言葉だが「やりがい」なのだ。

「時は来たれり!」

優秀な銀行員が多くの事業会社で光を放ちながら、日本の企業全体を明るく活性化してくれることを期待して止まない。