カギは人形の"透け感”…『ねほりんぱほりん』が大ヒットしたワケ

トークバラエティの常識が覆された
菊地 浩平 プロフィール

彼女が当時のことを克明に語れば語るほど、現場の空気は凍りついていく。特にYOUによる「殴りてえ!」、「こういう女嫌い!」といった、素直で攻撃的なリアクションはこちらも冷や汗ものだ。

もし自分が現場にいたらどれだけ気まずいか……と思わずにはいられない。また画面越しでも生身の彼女を目の当たりにしていたら、この回は見るに堪えないものになっていたはずで、ブタの人形に感謝したくもなる。

 

「何者かになりたい!」をこじらせた結果

しかし番組後半、なぜ彼女がサークルクラッシャーになったのか、高校生の頃から現在に至るまでどのような人生を歩んできたかを語り始めると、空気はガラッと変わる。

サヤカは高校時代、何かに秀でているわけでも、異性からちやほやされるわけでもなく、「自分って何もないな」と強く感じていた。それは「何者かになりたい」という野心を持て余す日々でもあった。

そんな折、とあるスポーツ(番組内では明かされない)に出会う。彼女はそのスポーツに打ち込むようになるが、当時、結婚するつもりで付き合っていた彼氏の理解を得られず別れることに。

こんなに好きでも恋愛ってうまくいかないのか……とサヤカは実感。スポーツに打ち込みたかったこともあり、ひとりの異性と関係を深めるのではなく、その場その場で相手を変えることを選ぶようになる(サヤカのターゲットとなった男性たちも、ブタの姿でそれぞれの特徴が絶妙に再現されている)。

そうして彼女はサークルクラッシャーになった。

画像出典:NHK「ねほりんぱほりん」

一方、高校時代から大学卒業後まで取り組んだスポーツは、全国第3位になるほどの成果をあげたものの、「1位になれなかった」ことでコンプレックスとなってしまったという。

大学卒業後は結婚し、デザインの勉強を始めた矢先、妊娠。母になり、仕事を続けるも両立は困難で、やがて離婚。親権も夫が得て、彼がのちに再婚したことで、ある日を境に子どもと会うことも出来なくなり今日に至る。

サヤカは番組中、何度も「何者かになりたい」という野心が自身の行動原理であったと語る。「何者かになりたい」からこそ、恋愛やスポーツやデザインの勉強、育児に勤しもうとしたが、どれも彼女が納得できる成果には結びつかなかった。そして結局、何者にもなれていない現在の自分に失望するのだとも。

そんな彼女を取り巻く現状も、サークルクラッシャーであった頃、自分に好意を寄せてくれた人たちをぞんざいに扱った報いかもしれない。彼女は涙交じりの声ながら、つとめて明るくそうまとめる。

前半のトーンから一変、現場には別の気まずさが漂う。かわいいブタの人形が重苦しさを多少はゆるめてくれるものの、彼女の心中についてあれこれ思いを巡らせた挙句、われわれ視聴者はその切実さに声を失ってしまう。