カギは人形の"透け感”…『ねほりんぱほりん』が大ヒットしたワケ

トークバラエティの常識が覆された
菊地 浩平 プロフィール

例えば2017年3月1日に放送された「整形する女」の回。

整形した女性が番組に出るとなれば、誰だってその人の顔面が気になるものだ。しかしもちろん、ゲストはブタの人形化しているので顔を見ることはできない。(代わりに目元ぱっちりのブタが登場する)

だったら見ないという視聴者もいるだろう。だが、「整形する女」回は、生身の人間の代わりに人形を使う効果が顕著にあらわれている。

それは人形を間におくことで、人間の身体につきまとう様々な情報(≒ノイズ)が省かれ、ゲストの話を「聞く」ことが可能になるというものだ。

 

例えば、整形経験のあるゲストが生身で登場するバラエティ番組を想像してほしい。

かかった金額をセンセーショナルに取り上げたり、それだけかけて整形する必要があったか否か、整形自体は是か非かという(やや説教じみた)討論が始まったり、芸能界の誰が整形しているかを衝撃暴露したり……そんな光景がありありと浮かぶ。われわれ視聴者もつい、好奇の目で画面を見つめてしまう。

そういったバラエティ番組のトレンドを踏まえると、じっくりと一般人の個人的な話を「聞く」というのはなかなかに難しい。

そこで人形である。

先述したように、整形の当事者に関する視覚情報はやや目元のぱっちりしたブタだけ。すると人間の身体につきまとう多くの情報(≒ノイズ)に視線を奪われることがなくなる。そして視聴者の関心は話される内容へと、やむなくフォーカスされる(その意味でこの番組はラジオに近い)。

また人形を介した結果、その体験談が特定の個人とのみ結びつけられることも回避できる。

つまり、話を「聞く」ことでおのずと、特別なひとの特殊なエピソードとしてではなく、より普遍的な主題として「整形」について考えることも可能になるわけだ(よって番組終盤でYOUが「本当に何なんだろうね。顔面って。不思議だね」という根源的な問いを口にするのは偶然ではない)。

こうして人間だけではなかなか果たしづらい役割を、人形が担って見せているのが『ねほりんぱほりん』なのである。

だが『ねほりんぱほりん』が優れているのは、カムフラージュとして人形が機能している点のみではない。

単なるブタの人形であるはずなのに、我々はそこにどうしても"誰か"を"透け"見てしまう。すなわち"透け感"が生じる瞬間にこそ、この番組形式の真価がある。

まさに「人間ノンフィクション」

神回! 元サークルクラッシャー

では『ねほりんぱほりん』における人形の"透け感"について考えていきたい。そのために2017年10月11日放送の「元サークルクラッシャー」回を取り上げようと思うのだが、見ていない方もいるはずなので、ややネタバレ気味にまずは内容紹介から。

ゲストのサヤカは大学のサークルで次々に男性と関係を持ち、サークル自体を機能不全に陥らせてしまう女性だ。

サヤカは番組前半、かつて駆使した恋愛テクニックを嬉々として話す。

7股をかけ、男たちからの好意を集めることに喜びを見出しながら、「食いついたなと思ったらもういい」(山里いわく「キャッチ&リリースするバス釣り」のようなスタンス)と語ったり、男を落とすテクニック5か条「サヤカ流あいうえお」を披露したり。

「サヤカ流あいうえお」が披露される(画像出典:NHK『ねほりんぱほりん』)

正直、司会の二人はもちろん、視聴者にとってもサヤカはなかなかに受け入れ難い人物である。