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キッコーマンのレストラン、「コース1万2000円」にした深い理由

いまの「繁盛店」に投げかけるある疑問
山下 知志 プロフィール

非常識な店が増えたと村田氏は憤る。では、老舗はどうなのですかという話になる。

村田:「普通の人が普通に働いて、ちょっとハレの日に来ていただけるくらいの値段帯をかちっと守って商売をしています」

そのうえで、昨今のいびつなグルメブームに次のように警鐘を鳴らす。

 

2020年に向けて、日本の食文化を伝える伝道師に

村田:「インバウンドだけではありません。2020年の東京オリンピックが近づいている。アジアの食文化の中心は東京です。発展していくアジアの人々に対して、日本の和食、洋食、中華に馴染んでいただくと同時に、日本の料理がどんどん海外、特にアジアに出ていく最大のチャンスでもあるのです。それなのに、腕を磨かず値段ばかりを上げていったり、予約の取れない店になったと満足していたのでは本末転倒です。行き着く先にあるのは自滅の道ですよ」

レストラン内観

KIKKOMAN LIVE KITCHEN TOKYOでは、コース料理の値段を1万~1万5000円(同)の幅に設定した。2020年9月までは、このシステムを維持、メニューづくりに同じ料理人やシェフが2度3度とコンビを組むことはないという。

予約時には専用予約サイトであらかじめクレジットカード番号を打ち込む必要があり、前日、当日キャンセルではキャンセル料が発生する。これは社会問題化している無断キャンセルやドタキャンを避けるためでもある。

もちろん、インバウンドの取り込みや東京オリンピックも意識しているので、Webサイトは英語にも対応し、専用予約サイトは15カ国語対応だ。

最後に、お客には料理になにを感じてほしいかを2人に聞いた。

脇屋:「自分でいうのもおかしいですが、試食してみたら、和食、中国料理、フレンチそれぞれの良さが出ていて、不思議なことに味が釣り合っていました。他の料理を邪魔するわけでもなく、和洋中の良さが出ていて全体的にバランスが取れている。僕は、このバランスの良さを感じてほしいと思っています。そして、ああ美味しいねと思っていただけたら嬉しいですね」

村田:「和食洋食中華の融合といっても、それなりの腕を持つシェフがつくるわけです。それがコース料理で流れるように出てくる。全部食べて、最後に美味しかったねと思っていただけたら最高です。僕たちの後に続くシェフには、この店で自己主張やパフォーマンスをやってはいけないと伝言を残しています。やはり、料理はバランスなのです」

食文化の国際交流と融合で、いったいどんな新しい料理や味が生まれてくるのだろう。食べる楽しみがまた1つ増えた。