日本人の多くがいまだに知らない「沖縄の本音」

知事選で問われる日本の民主主義と良心
木村 朗 プロフィール

安倍・石破両氏は沖縄入りしなかった

現総裁の安倍晋三首相と石破茂氏との一騎打ちとなった自民党総裁選挙は、安倍氏側が一貫して論争を避けて自由な論議やメディア報道を抑圧したこともあって盛り上がりの欠くなかでの安倍首相の3選が決まった。

この安保・基地問題が置き去りとなった感のある総裁選に、故翁長雄志知事の次男雄治氏(那覇市議)が「沖縄のことについて言えば、この二人はどちらがなっても一緒だ」と語っているように、沖縄県民が終始冷めた視線を送っていたのは当然である。

石破氏が日米地位協定の見直しにまで言及したとはいえ、安倍氏はむろん、石破氏も総裁選挙中に沖縄入りをすることは無かった。

「辺野古移設が唯一の解決策」とするこれまでの日本政府の姿勢を全面的に変えて、沖縄への米軍基地負担の過度の集中という不条理・差別の根本的解消をはかる意思が安倍・石破両氏ともに欠如していることが明らかである(拙稿「安倍・石破の両“防衛論”はどう違うのか」『週刊金曜日』2018年9月14日号、を参照)。

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それだけではない。

総裁選に勝利した安倍首相は改憲への強い意欲を表明しており、沖縄知事選挙をクリアすればそうした改憲の動きに弾みがつくという姿勢を露骨に示している。

まさにいまの日本は、民主主義からファシズムへの移行、平和国家から戦争国家への転換の過渡期にあり、民主主義と平和にとって最大の岐路に立たされているといえる。

 

米国人の父、日本人の母を持つ玉城デニー候補はある意味で、故翁長知事が言われたように戦後の沖縄の象徴的な存在である。彼の立場はごく明快である。

9月13日に母の故郷である伊江島で上げた第一声は、「伊江島は私のアイデンティティ、人権を取り戻す“島ぐるみ”“ちむぐくる”。今こそ“ちむぐくる”をもう一度思い起こし、右も左も関係ない、アイデンティティに根差した未来の沖縄をつくっていきたい」であった。

“ちむぐくる”とは、沖縄の方言で、「肝心」「人の心に宿る、より深い想い」との意味とされる。

ここには、自分に後継者としてしての熱い期待を寄せてくれた故翁長知事の辺野古新基地建設を許さないという固い意思をこれから自分が受け継いでいくとの玉城氏の強い想い・決意が溢れている。