日本人の多くがいまだに知らない「沖縄の本音」

知事選で問われる日本の民主主義と良心
木村 朗 プロフィール

二重の植民地支配が続いている

一方、政府・与党は翁長知事死去後も、目前の県知事選挙に万難を排して勝利して、選挙後は予定通り辺野古埋め立てのための土砂投入を実施する意向であり、あくまでも辺野古新基地建設を強行する姿勢を崩していない。

そのことは、最近出された防衛白書で、沖縄の米軍駐留の根拠としてきた朝鮮半島情勢の不安定性や北朝鮮の脅威についても変化はないとの見方を打ち出していることや、GDP比「1%」枠を撤廃して戦後最大の防衛費5兆2900億円の概算要求をしていることからも明らかである。

ここで、翁長知事が生前、7月28日の辺野古承認撤回を表明した記者会見で、南北首脳会談や米朝首脳会談にふれ、「朝鮮半島の非核化と緊張緩和にむけた米朝の努力が続けられている中、20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に推し進めようとする政府の姿勢は到底容認できるものではない」と強調されたことが想起される。

またこれに関連して、生前の翁長知事が「冷戦構造も崩壊した。沖縄も保守革新の対立構造を乗り越えなくてはならない」と述べていたことや、「“鳩山さんは沖縄にとって恩人だよ”と言っていました。官僚の壁が厚くて辺野古に戻ってしまったのですが、もう一歩進んで考えたら沖縄県民はもう我慢しなくて大丈夫なんだ、と思わせてくれた人」と語っていたという故翁長知事の妻である樹子さんの貴重な証言が注目される(『週刊金曜日』2018年9月14日号を参照)。

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現在の朝鮮半島情勢は、今年になって南北首脳会談や米朝首脳会談が相次いで開催されるなど、昨年の戦争勃発の危機から脱して平和と共存に大きく舵を切ろうとしている。

最近行われた3度目の南北首脳会談や2度目の米朝首脳会談に向けた動きが加速しつつあることも注目される。

それは、朝鮮戦争の終結宣言だけでなく朝鮮南北の平和的民族的統一への道とつながり、戦後70年以上続いてきたアジアの冷戦構造が終焉することを意味している。

それと同時に、戦後日本の国体であった「安保」と自発的従属からの脱却と東アジアにおける東アジアの平和構築にとっての好機でもある。

戦後日本は真の意味での独立国家でも法治国家であったことはない。

日本はアメリカの「属国」(ガバン・マコーマック氏)であり、米国(というよりも、米軍)による占領支配が現在まで続いているのである(矢部宏治著『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』、講談社現代新書、白井聡『国体論 菊と星条旗』集英社新書、を参照)。

また、沖縄は米軍の直轄の軍事植民地(チャルマーズ・ジョンソン氏)であると同時に、日本の国内植民地(前田哲男氏)でもある。つまり、沖縄は日米両国による二重の植民地支配下に置かれ続けているといえる。

 

であるならば、この沖縄問題の解決は、日本の対米自立の試金石であり、沖縄が東アジアの軍事の要石から脱して、平和の要石となる大きな鍵を握っていることは間違いがないといえよう。

日本政府と本土の日本人は、故翁長知事の「日本の独立は神話である」「(日本は)法治国家ではない」という言葉の重みをかみしめるべきである。

その意味で、自由党衆議院議員であった玉城デニー氏と普天間飛行場を抱える宜野湾市長であった佐喜真淳氏との事実上の一騎打ちとなっている沖縄県知事選挙が決定的に重要である。

辺野古問題の争点化を避ける構えを自民・公明などが推す佐喜真陣営が見せているが、今回の知事選挙ではこれまで以上に、沖縄の人権と日本の民主主義をどう守るのか、が最大の焦点とならなければならない。

そこで問われるべきは、沖縄差別の根本的解消と辺野古新基地建設の阻止のために身体を賭して闘った翁長知事の遺志が引き継がれるか否かである。まさに基地のない沖縄の未来をかけた闘いである。