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ネット銀行、小売業が運営する銀行……台頭する新興勢力の現在と未来

住信SBI銀行はなぜ成功したのか
地方銀行の9割は再編、メガバンクも大激変は不可避……。フィンテックの専門家で『銀行はこれからどうなるのか』などの著書で知られる泉田良輔氏は、銀行の「未来の姿」をこのように予測する。しかし悲観的なことばかりではない。「住信SBI銀行」を始めとするインターネット銀行、「イオン銀行」を始めとする小売業による銀行など、新興勢力の台頭も目立っているのだ。どこに預けるかが格差を生むといわれる今、泉田氏に最新の状況を教えてもらった。

ネット銀行はすでに有力地銀並み

日本では、「店舗を持たない銀行は成功しないのではないか」と考えている人もいるだろう。何をもって成功とするかという議論はあるが、住信SBI銀行の規模を見ると、その考えも少しは変わるのではないか。

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住信SBI銀行は2007年9月に営業開始。同行の預金残高は16年9月末で3兆6242億円で、証券口座とのハイブリッド預金(後述)を含む口座数は約270万口座にも及ぶ。16年3月期の業務粗利益は328億円、業務純益126億円、経常利益は122億円、当期純利益は83億円となっている。

この規模は、たとえば地方銀行で見ればどのあたりに位置するのか。住信SBI銀行の16年3月末の預金残高は約3.6兆円ある。地方銀行で同程度の預金残高のある銀行を見ていこう。

たとえば、大阪の池田泉州銀行の約4.7兆円、岐阜県の大垣共立銀行の約4.5兆円、北海道の北海道銀行の約4.3兆円、熊本の肥後銀行の約4.2兆円、静岡県のスルガ銀行の約4.0兆円といった水準にはまだ及ばないものの、すでに有力な地方銀行程度の預金残高があるといえるだろう。そして同行の預金残高は拡大し続けている。

 

「モバイル型」銀行としてこれから競争優位を押し上げる上での重要な点として、預金口座から預金以外の投資機会へのシームレスなユーザーインターフェース(使い勝手)を指摘しておきたい。住信SBI銀行では「ハイブリッド預金」と呼ばれる預金口座を活用することでその環境を実現している。

ただ、住信SBI銀行が、わずか10年程度で長い歴史のある中堅の地方銀行クラスの預金残高を積み上げることができたのは、もともとはSBI証券を核としたSBIホールディングスにおけるグループでの多くの顧客との接点(タッチポイント)があったからだ。

SBI証券は1998年にソフトバンクと米E*Tradeが出資したイー・トレードが大沢証券を100%子会社化し、証券業の登録を受けるところからスタートしている。

つまり、住信SBI銀行の急拡大した預金残高もその顧客も、SBI証券で積み上げられてきた顧客基盤があってのことだ。ハイブリッド預金はSBI証券と連動した円預金で、その預金はSBI証券口座の買付余力として反映され、金融商品の取引をスムーズに行うことができる。

ただ、預金のすべてがハイブリッド預金というわけではない。16年3月末でいえば、約3.6兆円の預金残高のうち約1.1兆円がハイブリッド預金であり、円普通預金と円定期預金の合計が約2兆円ある。こうして見ると、金融商品へのアクセスのみを重要視した顧客だけではなく、銀行としての使い勝手を評価した預金残高も多いことがわかる。