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太陽より熱い! 「1億2000万度」とは、どんな世界なのか?

夢の「核融合」いよいよ実現に前進か
灼熱の太陽の内部で起きている「核融合」を地上で再現することはできるのか?
夢の技術と思われていた核融合だが、すでに日本の研究機構がそれに必要な「1億2000万度」を達成したという。

人類の夢──地上に太陽のエネルギーを!

われわれ現代人の生活は大量のエネルギーに支えられている。

そのエネルギーはたとえば、化石燃料(石油や石炭、天然ガスなど)を燃焼したり、風や水の流れを利用したり、核分裂反応を利用したりといった方法で得られる。

しかし、世界の人口増加やライフスタイルの変化は、ますます大量のエネルギー消費を招きそうだ。エネルギー不足を心配しなくて済むような、莫大なエネルギー源はないだろうか?

SFの世界ではしばしば「夢のエネルギー源」が登場する。

たとえば大ヒットしたアメリカ映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。それ自体が夢の技術であるタイムマシン「デロリアン」は、未来の世界で夢の発電機を搭載して帰ってくる。

その発電機は、生ごみや飲み残しのビールを燃料にしてエネルギーを得る。映画の中で詳しくは語られないが、そのプロセスは「核融合」だそうだ。

あるいは日本のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』。巨大ロボットであるガンダムの動力源は、架空の物質ミノフスキー粒子を用いた核融合により得られる、と説明される。なるほど、巨大ロボットを宇宙空間で動かすためには、並みのエネルギー源では不足だろう。

残念ながら、現実には核融合によるエネルギーの獲得は未完成の技術である。しかし、SFでしかありえない荒唐無稽な技術かというと、そうとも言い切れない。

第一に、自然界では核融合が実際に起きていて、想像を絶するほど大量のエネルギーを生み出している。そう、地球を照らす太陽のことだ。

第二に、世界では核融合の実現を目指す研究が進められている。地上に太陽のエネルギーを生み出す挑戦といえよう。

 

太陽のエネルギー源──プラズマ核融合

太陽は約46億年前に誕生して以来、絶え間なく光り輝き、太陽系を照らし、地球の生命を育んできた。地球のほとんどすべての生き物が太陽のエネルギーに依存している。

ところが、太陽のエネルギーの源は長年にわたる謎であった。その謎に初めてもっともらしい解答を与えたのは、1939年にハンス・ベーテが発表した「Energy Production in Stars(恒星におけるエネルギー産生)」という論文である。

ベーテはもともと、当時ドイツ領であったストラスブール出身の原子核物理学者だが、ナチスドイツの迫害から逃れ、1935年にアメリカに移住しコーネル大学の教授となった。

まさにそうした時期、彼は、「太陽のエネルギー源はプラズマ核融合である」という理論を打ち立てた。ベーテはその後1967年にノーベル物理学賞を得ている。

ここで、ベーテの理論を簡単に説明しよう。ここで「プラズマ」についてはひとまず考えないことにする。

太陽には、大量の水素が存在している。その中心部(核)では、4個の水素原子核から1個のヘリウム原子核ができる、という反応が繰り返し起こっている(実際には4個の水素原子核が一気に反応を起こすわけではなく、ヘリウム原子核になるまでに数段階の反応を経る)。

軽い原子核が融合して新たに重い原子核をつくるので、これを「核融合反応」という。この核融合反応の結果として、膨大なエネルギーが生み出されている。

太陽の中心部で起こる核融合反応によって得られたエネルギーは、大部分がガンマ線となる。そのガンマ線は周囲の物質と相互作用をして電磁波(光)へとすがたを変えながら、数十万年をかけて太陽の表面にまで到達する。

太陽表面を飛び出した光が地球に到達するまでには、約8分かかる。