50年間続いてきたカトリック教会「性的児童虐待」の深い闇

なぜ教会は対応を誤ったのか
森本 あんり プロフィール

「ジェイ報告」に見る虐待の実態

とはいえ、まずはその実態を報道の限りでなるべく正確に把握しておく必要があるだろう。

カトリック司祭(神父)たちの性的虐待という事実を最初に大きく報道したのは、米国のボストン・グローブ紙である。

2002年1月に第一報が出ると、それを読んで過去に同様の被害を受けた人びとが次々と名乗り出て事実を語るようになり、全米にその動きが広がった。同紙の取材チームは、その後も続いた一連の報道で翌年のピュリッツァー賞を受賞している。

これらの報道を受けて、はじめは隠蔽と釈明に懸命だったカトリック教会幹部も、みずからの内に巣くう腐敗の事実に正面から向き合わざるを得なくなった。

教会は、ニューヨーク市立大学の刑事司法専門校に協力を仰ぎ、大規模な被害調査に乗り出す。

2004年に公表されたこの調査報告は、協力した大学の名をとって「ジョン・ジェイ報告」と呼ばれており、今でも全文がPDFで公開されている。

報告書は、ここ半世紀の間に性的虐待に関与したとされる1万人以上の被害者と4千人以上の司祭について調べた結果である。それをごく大雑把に数字で見ると、こんな具合である。

 
・被害者の8割は男子。
・被害者の年齢は、10歳以下が2割、11〜14歳が5割、15〜17歳が3割。
・虐待は50年間続いているが、1970年代に起きた件数がもっとも多い。
・報告の件数は、2002年から2003年の間に出されたものが全体の3分の1を占める。
・報告は、4分の1が事件から10年以内になされ、半数が10年から30年後、残りの4分の1が30年以上経ってからなされている。
・加害者は、6割が1回だけ、それ以外が2回以上の嫌疑を受けている。
・加害者の年齢は、初回の報告時点で半数が35歳以下。
・加害者自身が過去に何らかの虐待の被害者だった例は7%以下。
・加害者の2割はアルコールか薬物の乱用者だが、事件が起きたときに使用していたのは1割。
・嫌疑を受けた加害者のうち、警察に被害届けが提出されたのは4人に1人。あとはすでに死去しているなどの理由で取り調べもされなかった。
・取り調べを受けた千人ほどのうち、384人が起訴され、100人が収監された。

虐待の具体的な内容は、卑猥な会話やポルノを見せることから、口唇や性器などによる性交に至るまで、どんなに婉曲表現を凝らしてもこのページに書くのが憚られるほど露骨である。