Photo by iStock

ブロックチェーンはジャーナリズムの「救世主」になれるか

デジタルメディアの祭典・ONA18レポート

デジタル・ジャーナリズムの潮流を知る

9月13日から15日までアメリカ・テキサス州オースティンで開催された、オンラインニュース・アソシエーション(Online News Association:ONA)の年次大会(ONA18)に参加した。

メディア企業の編集幹部らが参加するデジタル・ジャーナリズムの国際組織はいくつかあるが、ONAはフリーランスや筆者のような半分研究者も参加できる、「草の根」デジタル・ジャーナリズムの組織である。日本支部も活動している(以下敬称略)。

年次大会は1999年から数えて19回目、今回は2500人余りが集まった。筆者は3回目の参加だ。150近くの大小セッションが開かれ、会場のホテル周辺ではソーシャルメディア企業のミートアップなども数多く開かれた。筆者が参加したイベントは限られるが、世界のデジタル・マルチメディアジャーナリズムについてトレンドの一端を紹介する。

個人的に少々乱暴なまとめ方をお許しいただくと、

(1)メディアの信頼をいかに回復するかという課題への取り組み

(2)ユーザーエンゲージメント(ソーシャルメディアなどを活用し、購読者や視聴者を増やす)を高めるための戦略とテクノロジー

(3) ブロックチェーンの導入によるニュースビジネスの新しい可能性

が、注目すべきポイントということになるだろうか。

 

あまりに深刻な「メディア不信」

「メディアは人々の敵だ」と公言してはばからないトランプ大統領に影響される人々の増加で、アメリカ社会ではニュースメディア不信が拡がっている。危機感は非常に強い。

昨年に続いてセッションのタイトルには、manipulation(ごまかしや意図的な操作)、misinformation(間違った情報)、disinformation(意図的に発信される間違った情報)、trust(信用)、reliability(信頼性)などのキーワードが並ぶ(セッションの詳細はこちら)。ところで、会場のwi-fiのパスワードも「real news」であった。

問題は、「ニュースメディア」と聞いただけで、反射的に強い拒絶反応を見せる人が増えているということだ。

未来学者のエイミー・ウェッブは、10年後のメディアの将来をデータにもとづいて予測する人気セッションを11年連続で開いている。彼女は今回、市場調査やマーケティングを行っているイプソス(Ipsos)社の2018年8月の調査を紹介し、「メディア関係者は何をすべきか、自分の頭で考えなければなりません」と迫った。

というのも、驚くべきことにこの調査では、共和党支持者の59%が「AP通信を信頼しない」と回答しているのだ。

AP通信と言えば、170年もの歴史を持ち、世界中260カ国以上のニュースを伝え、アメリカの新聞やテレビだけでなく世界のメディアが記事を引用している、権威も信用もある報道機関だ。しかし、ウェッブは参加者に「自分の街に帰って、10人に声をかけて『APってなんだか知ってる?』って聞いてごらんなさいよ」と皮肉り、会場の笑いを誘っていた。

壇上に立つウェッブ氏(左)

事態は深刻だ。かつて人々の拠り所であったはずのメディアに対する、信頼の基盤が完全に失われている。しかし、メディアは有効な対策を打ち出せていない。

メディアに対する厳しい見方が蔓延しているいまだからこそ、間違った情報の拡散を食い止めるのはニュースメディアの責務だという認識が、会場では強く共有されていた。とりわけ関心のポイントは、「誤った情報や偽の情報が、ソーシャルメディアの複数のプラットフォームを行き来しながら拡がっていくメカニズムを分析すること」、そして「間違った情報を発見し、検証し、正しい情報を発信して対抗していくために、いかにメディア同士が協力し合えるか」の2点だった。