訓練中の護衛艦「かが」内部の様子(海上自衛隊公式サイト)

海上自衛隊が南シナ海で異例の「対潜水艦戦訓練」を決行した事情

実は初めての「単独訓練」だった

極めて異例の「自衛隊単独訓練」

海上自衛隊は13日、護衛艦3隻、潜水艦1隻が参加する対潜水艦戦訓練を行った。これだけなら珍しい話ではないが、訓練を行った場所が南シナ海だったのである。

海上自衛隊は「専守防衛」の原則から、海外で行う他国軍との共同訓練を除き、これまで日本周辺で訓練してきた。日本からはるか離れた海域で、かつ自衛隊単独で本格的な訓練を実施するのは極めて異例だ。

南シナ海では、南沙諸島、西沙諸島の環礁を埋め立てて軍事基地化を進める中国に対し、米国が駆逐艦などを両諸島へ派遣する「航行の自由作戦」を展開、8月には英国も揚陸艦を西沙諸島へ派遣している。今回の訓練は、日本が米英と足並みを揃えつつあることを示した。

中国はどう反応したか。外務省の耿爽副報道局長が17日の記者会見で、「域外国は慎重に行動すべきで、地域の平和と安定を損なわないよう促す」と反発したものの、「日本」を名指しせず、「域外国」との表現にとどめた。これは中国が権利を主張する「領海」への侵入がなかったこと、訓練の狙いが分かりにくかったことが要因とみられる。

だが、日本政府にとって今回の訓練の位置づけは明確である。安倍晋三首相が2016年8月、ケニアで開催されたアフリカ開発会議(TICAD)において打ち出した「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づき、中国を牽制するという狙いだ。

 

訓練は海上自衛隊の独断だったわけではない。防衛省はもちろん、首相官邸、国家安全保障会議、外務省も了解している。

外務省によると、「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは、アジアとアフリカ、また太平洋とインド洋を結び、新たな日本外交の地平を切り開くことだという。そのためには、「法の支配」に基づく国際秩序の確保が欠かせないことから、南シナ海で環礁を実効支配し、「航行の自由」を認めない中国に対する事実上の封じ込め策となっている。

海上自衛隊公式サイトより

17年11月に来日したトランプ米大統領は、安倍首相との間で「自由で開かれたインド太平洋戦略」について合意し、早速、アジア・太平洋方面軍である「太平洋軍」を「インド太平洋軍」に名称変更した。

一方、海上自衛隊は17年、1992年から続く米印共同訓練の「マラバール」に継続して参加することを表明。日米印共同訓練に格上げされた「マラバール2017」には、海上幕僚監部ナンバー2の山村浩海上幕僚副長を筆頭に、隊員約700人と海上自衛隊最大の空母型護衛艦「いずも」と汎用護衛艦「さざなみ」を派遣し、インド東方海域で日米印三カ国の艦艇による対潜水艦戦訓練などが大々的に実施された。

「特定国を想定した訓練ではない」(海上自衛隊幹部)というが、中国海軍の潜水艦はインド洋を航行している様子が確認されており、パキスタンやスリランカにも寄港している。中国の潜水艦への対処を意識しているのは明らかだ。

また17年11月には、タイで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)創立50周年記念の国際観艦式に、護衛艦「おおなみ」を1カ月間にわたり長期派遣して、日本の存在感を示した。

このように海上自衛隊は昨年、マラバールと国際観艦式への参加を通じて「自由で開かれたインド太平洋戦略」に「具体的に貢献した」(同)ものの、今年の「マラバール2018」はインド洋とは無縁のグアム島周辺海域での実施となったうえ、国際観艦式もなかった。