奄美の海底にミステリーサークル出現! 生命科学者が「謎」を解く

図面もなしで美しい模様を描く秘密
近藤 滋 プロフィール

中心部分の小サークルには、かなり大量の細かい砂が必要であり、単に、その場で砂を舞い上げるだけでは足りないのである。だからフグは、どうにかして、周囲の領域から、細かい砂だけを中央部分に集めてこなければならない

もちろん、単に、周囲の部分で砂を巻き上げることを繰り返しても、同じ場所に降り積もるだけなので、中央部分に集まらない。

どうしたらよいだろう?

 

奇怪な「溝」に意味があった!

そこで、周囲の放射状の溝が意味を持つ。

まず、直線状の深い溝を掘り、その中心部あたりに体を固定して、鰭を動かすとどうなるか?

その通り。溝に沿った水流ができる。細かい砂は、その水流に乗って少し離れたところまで運ばれる。

個々の放射状の溝の中心部分に、特に深く掘られた部分がある(図2の青矢印)。フグは、ここの地面に腹鰭を埋めて体を固定したのちに、尾鰭を激しく動かして水流を作り、細かい砂を中央部に送り込むのである。

もっとも効率的に、周囲から中心部に細かい砂を集める溝の配置は、というと、真っ先に頭に浮かぶのが放射構造である。

また、溝は、後ろ向きで水流を作るときに、方向を決めるのにも役に立つはず。
つまり、この不可思議な構造には、必要性に基づく理屈が存在するのである。
(注:溝を作るための労力というコストがかかるので、これが本当に最善のやり方かどうかはわかりません。また、溝にはメスを誘引するための目印、という意味もあるかもしれません。)

設計図なしでどうやって作る?

研究は、奄美大島でのビデオ撮影による行動解析、砂の分析、計算機シミュレーションにより行った。

建築のかなり大雑把な順序は以下の通り。

1)中心部のマーキング
腹をこすりつけて、なんとなく巣の中心を決める。ご覧の通り、ピンポイントのマークになっていない。

フグが最初に作る中心部のマーク?図4 フグが最初に作る中心部のマーク

2)外側の放射溝の作成
主に外側から中心部に向かって砂を巻き上げながら泳ぐことで、溝を刻んでいく。この過程は、3~4日かかり、フグはのべ数千回は同じ掘削(くっさく)行動を繰り返す。

3)砂を中心部に集める
一本一本の溝の中ほどに、外側を向いて着底し、ヒレを動かして水流を作る。巻き上げられた細かい砂は、中心部分に運ばれる。

細かい砂を中心部に送る図5 細かい砂を中心部に送る

4)中央部分の整形
尾鰭の先を海底に接触させて泳ぐことで、浅い迷路上の溝を刻んでいく。

細かい砂を中央に集めるという「目的」から考えると、2)の工程が、土木工事として一番重要であり、正確さを求められる。

実は、建築上の謎も、この部分に集中している。フグは、人間のように設計図を持っているわけでもないし、建築現場をあらかじめ測量して、溝の正確なマーキングをするわけでもない。その上、常に海底付近に居るために、上からサークルの出来栄えを観察することすらしないのである。

どうやったら、正確な放射構造をつくれるだろう?