奄美の海底にミステリーサークル出現! 生命科学者が「謎」を解く

図面もなしで美しい模様を描く秘密
近藤 滋 プロフィール

共同研究のスタート

4年ほど前(2014年)、海底のミステリーサークル研究の第一人者である川瀬裕司(ひろし)氏は、この謎を解明するために、研究協力者を探してしていた。

この研究には、動物行動学の他に、3次元形状の正確な測定、シミュレーション、水流中の砂礫の動態力学、などの専門知識が必要となる。そのすべてを一人でこなすのは、極めて難しいだろう。そこで川瀬氏は、生物のパターン形成を専門としている筆者(近藤:阪大)に、相談を持ち掛けてくれたのである。

筆者は、ちょうどそのころ始まった、リーディング大学院というプロジェクトで、生物学、情報科学、基礎工学の大学院生が一緒に取り組める課題を探していたため、フグのミステリーサークル形成研究は、まさにピッタリのテーマだった。

こうして、千葉県立中央博物館分館海の博物館の川瀬氏と阪大の大学院生との間で共同研究がスタートすることになった。

今回、シミュレーションを担当したのは、水内良君(現ポートランド州立大学)。

川瀬氏から我々に与えられたミッションは、どんな原理で、この正確なミステリーサークルができるかを、明らかにすることである。

 

砂をより分ける秘密

だが、その本題に入る前に、何故フグはこんな複雑な構造が必要なのか、この構造にはどのような機能があるのか、を知っておいた方がより楽しいと思うので、まず、そちらを先に解説したい。以下、川瀬氏のこれまでの研究からの推理である。

サークルは、大雑把に見て、「内側の迷路模様の小サークル」と「外側の放射構造」の2つの部分に分かれているが、メスが卵を産み付けるのは内側の小サークルだ。

サークルの構造図2 サークルの構造

この部分の表面は細かい砂で覆われている。おそらく、この細かい砂が繁殖には重要であり、メスに細かい砂の床を見せることで、産卵を促すと考えられた。

だが、細かい砂の床は、そう簡単には作れない。なぜなら、海底の砂粒はいろいろな大きさのものがあり、それが混ざっている。特に、小さい砂粒は、大きな砂粒の隙間を落ちていき、下の方に溜まりがちだからだ。

では、どうやって細かい砂粒だけをより分けて、上層に敷き詰めるか?

フグには手も足もないし、スコップも持っていない。しかし、細かい砂を上にだす簡単なやり方がある。フグは、鰭を強く動かして水流を起こし、砂を巻き上げるのだ。舞い上がった砂のうち、大きな粒は早く落ち、細かい粒が後から降り積もるので、砂の位置関係を逆転させることができる。

細かい砂を表面に出す方法図3 細かい砂を表面に出す方法

こうして、卵を産み付けるための細かい砂が表面に出てくるわけだが、まだ問題がある。