難関の国家資格の代表格である「弁護士」が、大きな転機を迎えている。司法制度改革で大幅に増やした合格者を一転して絞った結果、今度は受験者が激減。かえって合格率が上昇する結果になっているのだ。
2002年に閣議決定された司法制度改革推進計画では、弁護士・検察官・裁判官の「法曹人口」の大幅な増員が掲げられ、司法試験の合格者数を「年3000人程度」とするとされた。これを受けて2007年から2013年までの7年間、司法試験合格者は毎年2000人を超えた。
ところが、法曹人口が増えたことで、弁護士業界から批判が噴出。「合格者が増えて質が低下した」「資格を取っても食べていけない弁護士が増えた」と言った声が上がった。
日本弁護士連合会などが法曹人口の抑制を要望したこともあり、2015年に政府が方針を転換。「年間1500人程度以上」に目標を修正した。
その結果、司法試験合格者は、2015年は1850人、16年は1583人、17年は1543人と着実に減少した。9月11日に発表された18年の合格者は1525人で、昨年よりさらに18人減少した。目標を当初の3000人から1500人に半減させた「政策」が、ほぼ実現できたわけだ。
合格者を減らすことで、弁護士の質を高めるというのが弁護士会などが主張する大義名分だった。合格者を絞れば合格率が下がり、再び難関の試験に戻っていく。そう弁護士会は考えたようだ。ところが、結果はどうも逆になりつつある。というのも受験者数が年々減少しているのだ。
2015年に8016人だった受験者数は16年に6899人、17年に5967人と大幅に減少、18年には5238人に激減した。この結果、2015年に23.1%だった合格率は、今年は29.1%にまで跳ね上がることになった。
合格率を見る限り、司法試験は難しくなるどころか、難易度は下がっていることになり、弁護士会の言う「優秀な人材」が本当に選別できているのか怪しくなっている。