口臭が原因で転落したエリートビジネスマンの悲劇

『歯はみがいてはいけない』著者が警告
森 昭

口臭の2大原因は「歯周病」と「舌苔」

口臭の原因が「歯周病」であることは一般によく知られている。そしてもう一つ、口臭の原因と考えられているのが「舌苔」である。

「ほとんどの口臭の原因は口の中にあります。口の粘膜は皮膚の垢(あか)と同じように、細胞が剥がれ落ちて、舌に白く溜まり腐敗します。これが舌苔(ぜっ・たい)です。舌苔は最大の口臭源で、口臭の6割が舌苔から発生します。」(日本歯科医師会 テーマパーク8020 ホームページより)

舌苔というのは、皮膚でいうと「垢」に相当する。口の粘膜の細胞がはがれたものが、舌の上にたまったものだ。

舌の位置が正常であれば、舌苔は、口蓋というお口の天井部分に触れていている。唾液や食べ物を嚥下するたびに、舌と口蓋がこすれ舌苔は落ちていくという仕組みになっている。口蓋にはヒダがついていて、ちょうど洗濯板で洗濯物をしごくように、きれいになる。

ところが、舌の位置が下に下がったり、奥に引っ込んでしまったりすると、洗濯板の機能が活かされなくなる。このために舌苔がたまり、ひどい口臭につながるのである。

 

「歯周病」「舌苔」に大きくかかわる「かみしめ癖」とは

この舌の位置の異常につながる癖こそ、前述の「かみしめ癖」なのだ。背筋を伸ばして唇を閉じた状態で、上下の歯は接触せず2~3mmあいている状態が正常といわれている(安静空隙)。安静空隙がなくなり、安静にした時にでも上下の歯が接する癖が「かみしめ癖」である。

「かみしめ癖」があると、歯周病が重症化していくことがわかっている。また舌の位置が下がり、舌苔の付着にもつながる。

そして今、この「かみしめ癖」が急増しているのである。冒頭で見たエリートサラリーマンの田中さんのようなケースは、特殊でも何でもない。あなたの会社で、周囲で、いつ起ってもおかしくない状況なのだ。

原因は、現代病ともいえる「口呼吸」と「猫背姿勢」である。

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加齢、とくに50代にもなると、唇の筋力が落ちてくる。自然と口が少し開くという状態になりがちだ。人間は通常、「鼻呼吸」が理想なのだが、口が開いてしまうと、口で呼吸したほうが楽なため、「口呼吸」傾向が強くなる。

この時、舌が理想的な位置であると、空気の通り道ができなくなるため、舌が下もしくは後ろに位置を変えることになる。舌の位置がズレるのにつられて、下あご全体も後ろに下がっていく。舌が下に下がることで、嚥下のたびに舌が臼歯を圧迫する……。

歯並びのバランスが崩れることで、無意識に歯をすり合わせて帳尻を合わせようとするようになってしまうのだ。これが「かみしめ癖」を引き起こしている原因の一つだ。

また、猫背姿勢になると、首の後ろの筋肉が慢性疲労を起こす。その慢性疲労から首の筋肉を休めるために、上下の歯をかみ合わせ下あごの動きを少なくする。無意識に「噛みしめ癖」につながることになる。

さまざまな要因から「かみしめ癖」になると、舌の可動域が狭くなっていく。唾液は舌が動くと分泌されるのだが、舌可動域が狭くなることで、唾液分泌量も減ってしまう。口蓋ヒダによる舌苔の掃除が行き届かないだけではなく、唾液分泌量が減ることで、口臭はいよいよ悪化していくのである。

加齢とともに、誰もが等しく「スメハラ」の震源地となるリスクを負うようになることは避けられない。それでも、冒頭の田中さんのようにならないために、働くみなさんには以下の4つの対策をおすすめしたい。それも今すぐに。