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パナソニックと「きれいなおねえさんは、好きですか。」の26年秘史

巨艦パナソニックが美容家電にこだわる理由
山下 知志 プロフィール

口コミマーケティングも重視している。

「商品の良さをできるだけ広げるために、ブロガーやインフルエンサーの方たちなど発信力のある人たちに、実際に使っていただいたり、セミナーの開催などを行っています。メーカーの人間が発言してもなかなかユーザーには届きませんが、ユーザーに近い人たちならば話は別です。口コミは非常に有効です」(神本氏)

インターネットの口コミサイト、@コスメをのぞくと、パナソニックの美容家電の口コミをみることができるが、商品の評価は高いほうだ。芸能人やプロのヘアメイクアップアーティストなども使用していて、そこから口コミが広がることも多いという。

着実に手を打っているパナソニックだが、ライバルの存在は無視できない。家電メーカーのダイソンが、2016年に5万円近い価格の超高級ヘアドライヤーを引っ提げて美容家電市場に参入した際には、さすがのパナソニックも慌てたという話を聞く。

美容・健康機器メーカーのヤーマンは、パナソニックの強力なライバルだ。自社工場を持たず、美顔器などの製造を外部委託する、いわゆる「アップル方式」で売上げと利益を急速に伸ばしている。

 

「ヤーマンは、特に美顔器に強みのある会社ですが、3~4万円もする商品がよく売れています。海外展開も中国の通販サイトに出店しているし、韓国には実店舗を出している。山崎貴三代社長は、美容家電の分野でグローバルブランドを目指すといっています」(家電業界紙記者)

人口減少社会に入り、家電の需要は右肩下がりになっていく。どう考えても家電に成長の絵は描けないが、パナソニックでは美容家電を高成長事業として位置付ける。従来にも増して重点的に投資を行っていくというのだ。

「美容家電は、ニーズや欲求を掘り起こしさえすれば、まだまだ成長します。たとえば、以前ならばスチーマーで十分だったのに、年齢による悩みが出ると、より効果のある商品が欲しくなる。悩みや欲求はより深くなっていくものです。そんな悩みを解消したり、欲求を満たすことに特化した商品を生み出していく。美容家電は、残された数少ない成長分野なのです」(神本氏)

「女性の社会進出が増えて、経済的に余裕ができたことも影響しています。化粧をしないで外出する女性はほとんどいないのではないでしょうか。ちょっと大袈裟かもしれませんが、女性が綺麗でいることは、社会的な使命と考える人もいます。また、エステサロンでしかできなかったことが、自宅でもできるようになりました。女性を取り巻く美容の環境が大きく変わってきているのです」(岡橋氏)

パナソニックは、美容家電の売上高や投資額を公表しておらず、中身はつまびらかではないが、国内と海外の売上比率は7:3の割合であることはわかっている。今後は、国内市場のさらなる拡大とインバウンドの取り込み、欧州や特に中国市場での販売にも力を入れることになる。

パナソニックが美容家電を高成長事業に位置付ける理由がもう1つある。それは、パナソニックが美容家電の歴史と市場をつくり、育てあげてきたという強い自負だ。

パナソニックの美容家電の始まりは、81年前の1937年までさかのぼる。まだ美容家電などという名前すらなかったこの年に、ヘアドライヤーが発売された。1958年には女性用シェーバーを、1978年にはフェイス用シェーバーを発売した。1980年には、家庭用スチーマーを世に送り出している。

そして、「きれいなおねえさんは、好きですか。」を経て、今日、美容家電の市場は小さいながらも花を大きく咲かせた。さらなる成長の果実を求めて歩みを進めるパナソニックにとって、美容家電はこだわらなければならない事業だったのだ。

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