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百年に一度の発明…ゲノム編集技術「クリスパー特許」の気になる行方

法廷闘争はなぜここまでこじれたのか

人類を含む、あらゆる動植物のDNA(遺伝子・遺伝情報)を自在に改変するゲノム編集技術クリスパー。途方もない産業的インパクトはもとより、生物進化のプロセスに科学的な介入を可能とすることから「百年に一度の発明」と称されるが、(巨大市場の米国で)その基本特許の行方がほぼ決した。

米国の連邦巡回区控訴裁判所は今月10日、クリスパーの基本特許を事実上(MITとハーバード大学が共同設立した)ブロード研究所に与える裁定を下した。これは昨年2月、特許商標庁の臨時法廷(正式には「PTAB」と呼ばれる審判部門)が下した同様の裁定を改めて認めた形だ。

原告側のカリフォルニア大学バークレイ校は今回の連邦控訴裁による裁定を不服として、最高裁への上訴も検討中と言われるが、この訴えが受理される可能性は小さいことから、「クリスパーの基本特許はほぼブロード研究所の手中に納まった」と見られている。

 

発端は米サイエンス誌に発表された論文

クリスパー特許を巡る係争は長くて複雑だ。そもそもの発端は2012年6月、カリフォルニア大学バークレイ校のジェニファー・ダウドナ教授と共同研究者のエマニュエル・シャルパンティエ博士らが、米サイエンス誌に発表した一本の論文にまで遡る。

カリフォルニア大学バークレイ校のジェニファー・ダウドナ教授〔PHOTO〕gettyimages

この論文の中で共同研究チームは「バクテリア(細菌)が自らの敵であるウイルスに反撃する適応免疫機能を、ゲノム編集(高精度のDNA操作)に応用できることを実験で示した」と発表。この技術は後に「クリスパー(・キャス9)」と呼ばれるようになった。

この論文発表に先立つ2012年5月、(ダウドナ教授ら共同研究チームを代表する)バークレイ校はクリスパーの基本特許を米特許商標庁に出願していた。

それから約半年後の同年12月、(ダウドナ教授らとほぼ同じ頃にクリスパーの研究開発に着手したとされる)ブロード研究所のフェン・ジャーン博士らの研究チームもクリスパーの特許出願を済ませた。

これらを受けて特許商標庁は2014年4月、クリスパーの基本特許を米ブロード研究所(ジャーン博士ら)に授与した。

しかしバークレイ校(ダウドナ教授ら)はこの決定を不服として、クリスパー特許の再審査を特許商標庁に申請。これは専門的には「特許干渉(patent interference)」と呼ばれる訴えだ。

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