ゲリラ豪雨をめぐる4つの疑問…「最近増えている」は本当か

意外と昔から言われていた
藤部 文昭 プロフィール

「ゲリラ豪雨」という言葉には批判もある。その1つは、戦争を想起させるというものである。それは一理あるが、作戦とか戦略とか、軍事に由来する言葉は日常よく使われるし、切羽詰まる、手ぐすねを引くなど、軍事由来とは意識せずに使われている言葉もあるので、あまり目くじらを立てなくても良さそうに思う。

また、「ゲリラ豪雨」のもう1つの問題点として「定義がはっきりしない」とも言われる。これはその通りであるが、同じことは「集中豪雨」や「線状降水帯」など、気象に関係する多くの言葉にも当てはまる。

自然は複雑多様であり、数学のような厳格な定義づけは、気象には必ずしもなじまない。ある場所で1時間に50mmの雨が降り、そこから10km離れた場所では降水量がゼロだったとしよう。このとき、その雨がゲリラ豪雨なのか、そうでないかを議論しても意味があるとは思えない。それより、どこでどのような雨が降ったか、それを降らせた雲はどのようにしてでき、どんな特徴があったかというような事実をしっかり押さえることが大事である。

 

発生を予測できるか?

一方、気象研究者の中には、上に挙げたこととは別の理由で「ゲリラ豪雨」という言葉を嫌う人がいる。ゲリラという言葉には、不意打ち、予測できないという語感があるため、予報の不完全さを責められているように感ずるというのだ。確かに、「ゲリラ豪雨」という言葉が要らないぐらいに予報が当たるようになるのが理想だろう。

ただ、「ゲリラ豪雨」という言葉を使う人は、必ずしも「予測ができない」ことを強調しているわけではなさそうである。気象会社の中には、メールサービスで「もうじきゲリラ豪雨が降ってきます」などという予測情報を流しているところもあるようだ。要するに「急に降り出す強い雨」の別表現だと思えば、傷つかなくて済むのではないだろうか。

実際、最近は急に降ってくる強雨を何から何までゲリラ豪雨と言っているように思える。しかし、この言葉が広まるきっかけにもなった2008年の都賀川の出水は、必ずしもゲリラ的な雨が起こしたものではなかった。

この日は本州に前線がかかり、北陸地方では未明に大雨が降った。金沢市内では浅野川が氾濫し、浸水被害が起きている。その後、雨域はだんだん南へ移り、京都府でも浸水被害が起きた。そして、午後に神戸付近に達し、水害を起こしたのであった。

都賀川の出水は14時40分ごろだが、その45分前には兵庫県の阪神地域に大雨洪水警報が出ていて、全くの不意打ちだったわけではない。ただ、都賀川の出水をもたらした雨は、近づきつつある雨雲の前面(南側)に新たに発生した積乱雲が降らせたものであり、この雲に限れば、その発達は急激なものだった[2]。

積乱雲(の集団)が他の場所から移ってくるときは、レーダーが捉えた雨域の移動を追うことで雨を事前に予測できる。気象庁のレーダー画像は、下記のサイトで提供されている。

http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/ (パソコン用)

http://www.jma.go.jp/jp/bosaijoho/m/radnowc/ (モバイル用)

画像は5分ごとに更新され、1時間後までの予想を動画で見られる。筆者も外出の時は、よくこのサイトを見る。

しかし、それまで雨雲がなかったところへ積乱雲が急にできるような場合は、予測が難しい。それでも、上空の風や水蒸気の詳しい分布を捉えることができれば、スーパーコンピューターによる計算と組み合わせることにより、積乱雲の発生を予知できる可能性がある。そのための観測機器の開発や予測手法の研究が進められている。