2018.09.19
# 精密機器 # Apple

アップルが「機械学習」に注力するたった1つの理由

最新iPhoneが示す新しい世界戦略
西田 宗千佳 プロフィール

アップルはなぜ、「自社開発」にこだわるのか

PCやスマートフォンのような製品は現在、部材メーカーからパーツを調達すれば、比較的簡単に開発できるようになった。

だが、アップルはそうした流れに逆らっている。

SoCなどのコアパーツは自社内で設計し、生産委託先でのパーツ素材の選択にも介入する。自社で古いiPhoneの回収・分解を行い、リサイクル素材の活用を徹底している。

 

このような「垂直統合」的なものづくりには、非常に大きなコストがかかる。だが、アップルは「一社が均質で高性能な製品を大量に市場投入する」ことをテコに、この容易ではない戦略を推し進めている。

それは、iPhoneだけに限った話ではない。同時に発表された「Apple Watch Series 4」でも、中核となるパーツはすべて自社開発し、その結果として、転倒事故を認識したり、心電図を計測したりする新機能を搭載することが可能になっている。

【写真】Apple Watch Series 4
  写真9 「Apple Watch Series 4」。こちらもiPhone同様、中身はほぼ「アップル独自設計」である

また、ハードウエアだけでなくOSも自社開発であるため、カメラの映像撮影にNeural Engineを活用するのが容易になっている。OS内には、マシンラーニングを活用する「CoreML」という要素を内包し、進化したNeural Engine向けもそうでないものも、同じようにソフトを開発することで、機能を活かせるよう基盤を整備しているのだ。

「高額に見合う魅力」を打ち出せるか

これらはすべて、未来のための「布石」という意味合いが強い。

こんにち、最新のスマホを買うときの魅力は「カメラの性能」であり、「デザインの美しさ」であり、「使いでのいいサイズ感」だろう。カメラについてはかなりの変化が見込めるが、それ以外の要素からは、中身の変化は見えづらいのが実情だ。

iPhoneは、高価な製品になった。

特に今回のラインナップは、その傾向が顕著だ。XSの場合で、最も安いモデルでも11万円以上の値段がついており、高価なモデルは20万円に迫る。

それほど高額になった理由の一端は、アップルによる「自社開発戦略」にある。この戦略を採り続けるかぎり、低価格モデルをつくっても他社との差別化ができず、どうしてもハイエンド重視にならざるを得ない。

アメリカの携帯電話事業者には、「高くなったiPhoneを、長期契約などの手法で割り引き、顧客を自社に引き留める」戦略が目立つ。高価になり、買い換えサイクルが長期化するスマホを、いかに顧客に「手に入れやすく見せるか」の競争が繰り広げられている。

日本でも、短期的にはそうした手法でiPhoneの高価格化に対応していくはずだ。国内では、「携帯電話の通信・通話料金を安くするために、端末の販売料金と分離せよ」と総務省が圧力を強めている。一理あるが、世界的に見ると、必ずしもメジャーな考え方ではない。

ユーザーの立場からは、「際立った差がわからなければ、高価なスマホの購入には二の足を踏む」のが本音だろう。アップルは、高度な技術にひそませた、外見からはわからない「布石」を、なるべく早く、多くの人にとってわかりやすい「魅力」に変えて見せる必要がある。

それは、彼らにとって「待ったなし」の、喫緊の懸案事項だ。

ハイエンドスマホメーカーにとっては、ユーザーが「従来のスマホでもいい」と考える時代をいかに早く終わらせるかが重要になっている。アップルが直面しているのも、まさにそのジレンマなのである。

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