この国で、地方移住がまったく進まない根本理由が分かった

魅力はあれど、支援がナシでは...
加谷 珪一 プロフィール

村八分でゴミが出せない?

一連の状況を総合的に考えた場合、このままでは地方移住が進展する可能性は低いだろう。

自由な移動というのは資本主義を成り立たせる根源的な要因とひとつであり、人口減少社会において都市部への人口集中が進むのは自然な動きといってよい。都市部の方が物価の高さをカバーできるくらいに賃金が高いのも自然なことであり、都市部で生活するのは合理的な選択といえる。

 

しかしながら、政策として地方を重視するということであれば、それはそれでひとつの決断であり、多くの国民がそれを望むのであれば、推進していく価値はあるだろう。

だが、実施しようとしている政策が市場メカニズムとは逆の流れにある場合、これを確実に実施するためには相応の準備が必要となる。現時点ではそうした準備が出来ているとは到底、思えない。

地方移住を妨げている最大の理由は、経済的な問題はもちろんのこと、それ以前の社会的な問題である。

近年、SNSが発達してきたことで、多くのナマの声がネットで拡散されるようになった。地方移住に関する話題もSNSに投稿されているのだが、その中には、近代民主国家としては目を疑うような事例も散見される。

よく目にするのはゴミの問題である。

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ある地域では、都会からやってきた新住民が村八分のような扱いを受け、何十キロも離れた集積所までゴミを運ばなければならない状態になっているという。

ゴミの集積所は自治会が運営しており、自治体のゴミ収集はその集積所でしか行わないという。新しい居住者は自治会に加入していないため、自治会の集積所にはゴミが出せず、自治体が運営する遠くの集積所まで、毎日、クルマを運転してゴミを出しに行っているという。しかも自治会に加入できないのは、本人に加入の意思がないわけではなく、自治会側が新住民を拒否しているという。

経済的な問題ではなく社会的な問題

SNSの情報なので真偽の程は不明だが、似たような事例が多数、ネットで報告されている現状を考えると、こうしたケースは珍しくないものと考えられる。

自治会はあくまで自治会なので、そのルールは地域住民が決めるべきものだが、自治会に加入していないことで行政サービスが受けられないという話が本当だとすると、それは近代民主国家として絶対にあってはならないことである。

ゴミの収集をはじめとする各種行政サービスを受ける権利は、納税する住民に等しく保障されたものであり、特定の住民が何の理由もなくこうしたサービスを受けられないというのは、基本的人権にも関わる重大問題といってよい。

本当に地方移住を推進したいのであれば、場当たり的な支援ではなく、社会的な部分での対策をしっかりすることが先決である。

ごくわずかな金銭的な支援だけを行い、あとは自己責任ということでは、誰もこうした施策には乗らないだろう。地方創生や地方移住というのは、実は日本社会の制度そのものが問われている問題なのである。