巨人のFAを見て思う…大金を手にすると人は力を抜くのかもしれない

大竹・野上・山口・陽岱鋼・片岡……
週刊現代 プロフィール

向上心という武器を失う

前出・広岡氏が、巨人に移籍して「ダメ」になった最たる例として才能を惜しむのは、やはり清原和博のことだ。'96年のオフ、清原が西武から巨人へFA移籍したときの年俸は、西武時代よりも1億2000万円高い推定3億6000万円にものぼった。

「ただでさえ29歳の若者にはあまりに大きすぎる金額だったうえ、環境も甘すぎました。移籍初年度に彼が不振に陥ったとき、私は『彼のためにも他の選手と同じように二軍でみっちりやり直させたほうがいい』と長嶋(茂雄)監督に進言したんです。

ところが、監督は『三顧の礼を尽くして来ていただいた清原クンを落とすわけにはいきません』と。その結果が、彼の慢心を生んで『番長』などと呼ばれるようになり、挙げ句の果てはああいう事になってしまった。

プロ野球史上稀に見るセンスを持った清原がダメになった元凶は、やっぱり巨人が分不相応なカネと立場を与えてしまったことに尽きる。一人の選手の人生が狂ってしまったのです」(広岡氏)

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巨人に移籍した当初こそ、破格の契約と注目度の高さでモチベーションが上がるだろう。だが、期待された成績が残せなければ、待っているのは、ファンやマスコミからの激しいバッシングだ。

「昔は、他のチームから巨人に移籍することで抜群に知名度が上がったし、引退後の仕事の引き合いも桁違いでした。

でも、もはや時代が違います。広島や日本ハムの例を見るまでもなく、地域に密着し、生え抜きの選手を育てながら、お客さんを増やしたチームのほうが強い。

身の丈に合わないカネを求めて巨人にいってダメになるよりも、地元のファンに愛されながらプレーをするほうが幸せな時代に変わったのかもしれません」(前出・江本氏)

 

分不相応な大金を得ると、人はダメになる――。前出の広岡氏は、「これは野球選手だけでなく、働く人すべてに通じる命題だ」と説く。

「目もくらむような大金が手に入れば、贅沢もできるし、いろんな自由が利くようになって最初は楽しいでしょう。

しかし、そもそも給料というのは、仕事でどれくらい成果を出したかによって決まってくるもの。だからこそ、『次はもっと頑張ろう』という意欲が湧いてきて、人は努力を積み重ねる。

それが、一度実績に見合わないカネを受け取ってしまえば、慢心が生まれ、死に物狂いで努力することが馬鹿らしくなってくる。向上心という最大の武器を失うことで、巡り巡って自分の首を絞めることになるのです」(広岡氏)

カネがなければ人は生きられない。だが、身の丈を超えたカネもまた、人生を滅ぼしかねない。

「週刊現代」2018年9月22日・29日合併号より