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日本を覆う「AI万能感」の危ない正体

AIの開発現場を混乱させる元凶

現在の「AI(人工知能)」は、日本語でいうところの「知能」とか「知性」とはまだ程遠い。これは世界のAI研究者の間では「常識」であるが、日本ではいまだ「誤解」が蔓延している。

AIが人間の頭脳を上回り、スーパーインテリジュンスが誕生する。シンギュラリティと呼ばれる現象だが、確かにそうした超知性が将来実現する可能性はあるだろう。しかし、それは未来の理想形の話であり、あたかも現在において、実現に限りなく近づいているかのように錯覚している日本人が多いことに唖然とする機会が増えてきている。

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「AIは万能」であるという錯覚

私は「AI×フィンテック」の専門家であり、グローバルの大手金融機関を相手に、AIを搭載したシステムを販売しているが、特に日本において顕著なAIへの誤解があらゆる混乱を生み、企業のAI開発の現場で混乱が起きる例を目にすることは少なくない。

なぜこのような事態に陥っているのだろうか。その根本的な原因は、多くの人がAIと言えば「万能」であるかのように錯覚していることが大きい。私はそれを、日本を覆っている「AI万能感」と呼んでいるが、これがすべての元凶といえる。

私はハーバード大学大学院に留学している際に、授業単位交換制度を利用して、当時、マサチューセッツ工科大学でマービン・ミンスキー教授(故人)の教鞭にふれたことがある。ミンスキー博士はMITの人工知能研究所の創設者であり、「AIの父」と称される。そんな私がこれまでたずさわってきたAI開発の歴史から、いま日本に広がる「AIの誤解」について解説していこう。

 

そもそも「AI」という言葉は世界中で大流行していて、報道でもAIという文字を見ない日のほうが少なくなったが、現在のAIブームは「第3次」にあたるものだ。

第1次ブームは1960年~70年代。前述したミンスキー博士らが主導したムーブメントであり、それに続いて第2次ブームは1990年代に広がった。私はこの第2次ブームのときにAIの世界に飛びこんだ。そしていま、2010年代のムーブメントが第3次にあたる。