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1週間乾燥させたクマムシが数分で復活! スマホ動画で配信してみた

大学教授が新技術の「伝道師」になった

「極限環境生物」への扉

私は、4年ほど前から大学での「極限環境生命科学」という授業やオープンキャンパスでの高校生への体験実験、さらには高校での出張模擬講義で「スマホ顕微鏡でクマムシを見よう!~100倍の日常をスマホで楽しむ~」という観察会を行っている。

私自身は、もともと極限環境、特に高アルカリ性環境を好んで生息する微生物の研究者である。勤務する東洋大学でも「極限環境微生物学」や「極限環境生命科学」といった講義を担当している。

その一環で、授業ではさまざまな極限環境生物について取り上げる機会がある。

2011年5月に、日本のクマムシ研究を先導されている東京大学の国枝武和先生に外部講師として東洋大学で授業に来ていただいた。国枝先生は、この講義で宇宙や高温、乾燥など過酷な環境に耐えることができることから、クマムシがテレビなどでは、「地球最強の生物」といわれているが、実は私たちの身近な場所に棲んでいることを講義してくださった。

クマムシの乾燥耐性機構を解明することは、将来、動物の細胞や組織を乾燥保存できる仕組みの解明にもつながる可能性があり、さらにはヒトの医療や産業など応用面にも大きな影響を及ぼすことが期待されている。

このように注目を集めるクマムシが本当に身近にいるのか。観察会はそれを実証することができる機会でもある。

 

スマホで100倍サイズのクマムシを見る

観察会で使われるスマホ顕微鏡(くわしくは後述する)「L-eye」は、100倍の世界を簡単に楽しむことができる。

100倍というと、大きさが数マイクロメートルの大腸菌や乳酸菌といった微生物を観察するには、小さすぎる。しかし、0.1ミリメートルから数ミリメートルの大きさのクマムシを観察するのには、ちょうど良いサイズになる。

クマムシは、乾燥環境で「乾眠」という状態になると無代謝状態になり、さまざまな極限環境に耐えることが知られている(なお、活動状態のクマムシでもかなりの放射線耐性を維持していることが知られている)。
 
実際に観察会では、学生たちに身近なところからコケを採取してもらう。

それを数センチのコケのかたまりが入るような粗いメッシュに包んで、水が3分の2ほど入った50ミリリットルのプラスチックの容器に浸して、20分程度放置する。そうするとクマムシがコケから落ちて底にたまる。

この待ち時間のあいだに、学生たちにパワーポイントで作成したスライドを使ってクマムシについて紹介したり、スマホ顕微鏡の使い方の説明ビデオを見てもらったりする。

そうこうしていると20分ほど時間が経つので、容器の底の部分をスポイトで採取して、L-eyeで観察をはじめるのだ。

たいていの学生たちが、すぐにコツをつかんでクマムシや線虫、ワムシなどコケの中に生きている生物を見つけることができる。学生たちは、自由気ままに観察を楽しんでくれているのがよく分かる。

クマムシは、短い4対の足を小刻みに動かす姿がとても愛らしく、顕微鏡の視野内を動きまわる。この様子は学生たちからも、とても評判がいい。

動きを見ていると、まるでジブリ映画の『となりのトトロ』に出てくるネコバスのようにも見えてくる。

  乾眠に入る前の元気なクマムシ。これから1週間、水を与えずに乾燥させる。著者提供

観察会を2回開催できる場合は、観察した試料を1週間放置する。すると水分はすべて蒸発し、コケもクマムシも乾燥してカラカラになる。クマムシは乾眠状態になったのだ。

そして1週間後の2回目の観察会で、試料に水を滴下してみる。すると、クマムシたちが短時間で見事に復活しているのだ!