私が開催している起業セミナーには、これから独立・起業したいという起業家予備軍が参加します。しかし、実際に独立・起業できる人は、そう多くはありません。結局、踏ん切りがつかず、会社勤めを続ける人も多くいます。
起業志望なのに起業をあきらめてしまう人の共通点は、「〇〇がないから」を理由にすることです。
「キャリアがないから」
「資格をもっていないから」
「人脈がないから」
「資金が十分にないから」
たとえば、自分にはキャリアがないからといって、40歳を超えてからMBA(経営学修士)を取得しようとする人がいます。
努力の末にMBAを無事取れれば本人は自信がつくのかもしれませんが、現実にはキャリアアップにつながるかどうか疑問です。起業で成功するのにMBAは必須の要件ではありませんし、まわりを見渡せばMBAホルダーはたくさんいるので、それが差別化につながるともかぎりません。
そのほか、起業するために資格取得に走る人もよく見かけます。「弁護士になりたい」という目標があるなら、司法試験の勉強は避けて通れません。「医者になりたい」という夢があるなら、医学部に入学し、国家試験にパスしなければなりません。
しかし、「起業するにあたって役に立つだろうから」といった理由で、明確なビジョンもなく、行政書士や社会保険労務士の資格合格を目指す人がいますが、それはMBAと同様、自己満足にすぎません。起業したあとのビジョンがないのに資格を取ったところで役に立つでしょうか。
「とりあえずビール!」と同じように、とりあえず英語を勉強し始める人も少なくありません。実際に英語を使うビジネスで起業するなら別ですが、TOEICのスコアを上げたからといって、それで食べていけるわけではないのです。それよりも、日本語力を磨いたほうがコミュニケーションがとれ、よほど効果的です。
「自分は学歴がないから」というコンプレックスを抱え続け、自信をもてない人もいますが、20代ならともかく、30代、40代になれば、もはやどこの学校を出たかなどは直接仕事には関係ないでしょう。
学歴コンプレックスを埋めるために大学や大学院に入り直したり、資格を取ったりするよりは、「どうやってお金を稼ぐか」を考えたほうがビジネスパーソンとしていいのではないでしょうか。
少し厳しい言い方になりますが、明確な目標もなく、「ない」ものにフォーカスして勉強を始める人は、自信のなさを勉強で埋めようとしているだけです。