# 世界経済

リーマン後10年、次に起きそうな「考えたくもない危機」のシナリオ

アメリカがその引き金を引く
唐鎌 大輔 プロフィール

これを企業部門にまで掘り下げてみると中国は約97%から約160%、香港は約134%から約232%、カナダは約84%から約114%、フランスは約107%から約134%へとやはり大きな伸びが確認できる。

もちろん、家計部門の債務も相応に伸びているが、下図に見るように、やはり全体をけん引したのは企業部門の債務だと考えて良いだろう。

とりわけ2008年9月対比で約100%ptsの増加幅となっている香港に着目せざるを得ない。

国際金融センターであるがゆえの特殊性が色濃く出ているのだろうが、このような増加幅が健全と言えるものなのか。直感的には不安の方が大きいという識者は少なくないと想像する。少なくとも先進国の中央銀行による金融緩和がなければ、ここまでの話にはなっていなかったことは容易に想像できる。

〔photo〕gettyimages

危機の引き金を引くのはアメリカ

また、上述したように、日本のバブル崩壊時には企業部門の過剰債務が問題視されたが、その際につけたピークは1993年12月末の147.6%だった。今まで見てきたように現在問題視される国・地域は当時の日本を優に超えるか、もしくは肉薄する債務状況にあるということになる。

企業部門の抱える過剰債務が不良債権化し、これが金融システムを直撃、その処理に手間取ったことが日本の「失われた20年」の一因として指摘された経緯を思い返せば、やはり一部の国における過剰な企業債務は次の危機の「芽」として目が離せないポイントだろう。

 

現在、世界が直面している民間債務の累増がすぐさま危機的な事態を招来すると言うつもりはない。貿易戦争や英国のEU離脱など、今後予想されるノイズを踏まえた上で慎重な検討が必要であろう。

しかし、ただ1つ確かなことはFRBが海外経済環境に配慮することなく利上げを続ける状況が続いており、来年はこれにECBも加わろうとしているという現実であり、かかる状況下、新興国をとりまく資金調達環境は悪くなることはあっても良くなることはないという未来ではないか。

これだけ債務が積み上がっていれば金利上昇に伴い借り換えが困難に至るケースも今後出てくるであろう。ラフに言えば、「低金利だからこそ儲かった」というプロジェクトが次々と淘汰されていくはずだ。それが利上げという政策の持つ本来の効果でもある。次の危機の「芽」として指摘すべきは民間債務の拡大、とりわけ新興国の企業部門における債務が調整を迎える懸念と考えて差し支えなかろう。

リーマンショック後の国際金融市場ひいては世界経済が新興国の成長神話に沿う形で活況を呈し、それが復調の契機にもなってきたことを思い返せば、新興国の腰折れとその停滞の長期化は考えたくもない事態ではある。もちろん、金融政策は国内経済目的だけに運営されていれば良いものであるし、それが国際的な紳士協定でもある。

だが、基軸通貨を司るパウエルFRB議長においては、そろそろ自身の利上げがもたらす国外への副作用に目を配る時が来ているようにも思われる。