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リーマン後10年、次に起きそうな「考えたくもない危機」のシナリオ

アメリカがその引き金を引く
唐鎌 大輔 プロフィール

この背景はどう考えるべきか。

言い尽くされた論点だが、危機後、日米欧の中央銀行は形振り構わない金融緩和を行い、世界的に低金利が定着、資金調達のハードルが下がり、消費・投資意欲も刺激されやすくなったことが主因であろう。

もとより世界経済のフロンティアが新興国にしかない状況で流動性が拡大したのだから、新興国への資本投下が増えるのは必然でもある。先進国の中央銀行が生み出した過剰流動性、新興国にまつわる成長国神話、「Search for yield」にこだわるアニマルスピリットが互いに絡み合った結果、今やGDP比で見た新興国の民間債務は先進国に肩を並べるまで至ったのだ。言い方を換えれば、世界経済がリーマンショックから立ち直るための代償だったと考えるべきかもしれない。

〔photo〕iStock

BISが名指しで警戒する中国、香港などの債務問題

なお、民間債務といった場合、それが企業もしくは家計のどちらに属するのかという疑問が生じる。例えばサブプライムショックおよびリーマンショック後の米国経済では家計部門の過剰債務が問題となった一方、1990年代の日本におけるバブル崩壊では企業部門の過剰債務が問題となった。いずれのケースにせよ、経済は相互連関しているので結局は景気の減速・後退に至る公算が大きいのだが、問題の所在を知る上では重要な論点でもある。

結論から言えば、現在の民間債務の膨張は企業部門にけん引されたものだ。データの制約上、新興国(およびこれを含む世界)の部門別債務状況は2008年以降しか取得できないものの、企業部門の債務増加ペースは明らかに普通ではない。

具体的には企業部門の債務(対GDP比)に関し2008年6月末と2017年12月末を比較すると先進国は約91%から約92%でほぼ横ばいとなっているのに対し、新興国は約60%から約105%へ急拡大している。世界全体では約82%が約97%へ押し上げられているが、当然、新興国の伸びが寄与した結果である。

 

ここまでをまとめると「新興国の民間債務、とりわけ企業部門のそれが膨張していること」が次の危機の「芽」の候補として挙がってきそうである。

では、さらに国・地域別に考察を進めると何が言えるか。ここでも先に結論を述べておくと、アジアでは中国や香港、北米ではカナダ、欧州ではフランスといったあたりが不安を抱えているように見受けられる。中国や香港、カナダは民間債務の大きさについてBIS報告書でも名指しで警戒されている。

まず、民間債務(対GDP比)に関して2008年6月末と2017年12月末を比較すると、中国は約115%から約209%、香港は約186%から約303%、カナダは約164%から約214%へ、フランスは154%から約192%へといずれも性急な動きを示している。とはいえ、下図に示されるように、香港の動きが突出している感は否めないだろう。