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自称「AIエンジニア」が大量発生しているヤバイ現実

AIを「使う」のと「作る」のは大違い

日本の大企業で大混乱

現在は空前のAI(人工知能)ブームだが、多くの日本人には「AI」とは何か、その論理的背景がほとんど理解されていない。しかも日本の「AIエンジニア」と呼称されるエンジニアにおいても、似たような現状がある。

たとえば、金融機関ではいまその仕組みをフィンテックによって変革することが求められている。しかし、頭取から「AI×フィンテック」の号令が発せられて、突然辞令が下りたフィンテック担当者が、何をしていいのか戸惑っている風景が日本全国で展開されている。実験予算がつくのでPoC(Proof of Concept)をやっては見るものの、精度が出ないため失敗を繰り返しているのが実態である。

メガバンククラスの金融機関でも、AIを使うにはデータ量が足りないからだと十把一絡に語る人が多いが、往々にしてデータの量ではなく「質」が問題であり、AIについての理解が追いついているとは言い難い

 

かたやアメリカの金融界では人材の総入れ替えがすでに起こっている。ゴールドマンサックスが有名な例として挙げられるが、かつて500名はいたといわれるトレーダーが今や数名に激減し、代わりに数学者やコンピューターサイエンティストが数百名単位で雇われているという。NYの金融機関と話すとPh.D.が出てくることも稀ではない。AIに欠かせない人材をかため、一気にフィンテックを進展させようという布陣である。

こうした布陣を取ろうとしている金融機関は日本では皆無だ。日本型雇用慣習からこれほどドラスティックな人材の入れ替えは難しいかもしれないが、少なくとも今いる人材の中で「AI×フィンテック」の基本を知っている人材を育成することは急務である。

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筆者はかつて商社系のベンチャーキャピタルに属し、シリコンバレーで数十社に実際に投資をし、また数十社のM&AやIPOなどに携わった。現在は日本でファイナンスとAIを結びつける事業を展開しているが、これまでの経験を通して、シリコンバレーではAIについて当たり前のように理解されている常識が、日本ではほとんど理解されていないことに気が付き、深刻な懸念を抱くようになった。

AIの基本的な理解がないために起きているのは現場の混乱と開発の大幅な遅延、停滞。にもかかわらずAI人材の育成を積極的に行わなければならないと危機感を抱いている金融機関はほとんど見当たらない。このままAI人材の育成が遅れれば、海外とのAIやフィンテックの格差は、埋めようのない領域まで広がってしまいかねない。