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あなたの低コミュ力は、「大人の発達障害」のせいかもしれない

家族、仕事…失う前に緊急チェックを!

普通にやっているつもりなのに、会社で上司に怒られてばかりいたり、同僚から煙たがられる。あるいは、家族が自分を理解してくれないばかりか、嫌っている節さえある。そんな経験、ありませんか?

発達障害は生まれつきの特性のため、幼少時から発症しますが、症状が軽度で見過ごされたり、周囲の理解が乏しかったりすることから適切な対応を受けなかったために、大人(大学生・青年期以降)まで持ち越してしまった人が少なくありません。この「大人の発達障害」の場合、自分や周囲の人が発達障害とは気づいていない場合が多く、深刻な事態になっているケースもあります。

そうした発達障害の傾向と対策についてまとめた書籍が、『【新版】 大人の発達障害に気づいて・向き合う完全ガイド』。発達障害の傾向がどのような形でわかるのか、またその対策について、いくつかの実例とともに本書の中からご紹介します。

 

職場のトラブルメーカー?

「ひどいな、これは! 古いものばかりだ」

そう言うと、彼はおもむろに、それまで読んでいた資料をまとめてゴミ箱にバサッと捨ててしまいました。

「おい、おい、A君! この資料、古いものもあるけれど、長い付き合いの得意先とか、大事なものもあるんだ。古いからって、そっくり捨ててもらっちゃ困るよ」

「でも、係長、こんな古いものに何の価値もないですよ。とっておく方がおかしいって」

「A君。なんでも自分だけで判断しないで、古いものでも、こっちに一言相談してからにしてくれないか」

「いや、捨てるべきですっ!」

またか……。周囲の職員は、そのやり取りに唖然とするとともに、うんざりした気分に陥りました。

係長の顔をにらむように凝視する目が、それを隠すように垂れ下がった前髪の間からのぞいています。

A君とよばれたその男性(38歳)は、少し前に係長であるBさんの部署に配属されてきました。髪は長めで、服装は地味ですが、ときどき真っ赤なジャンパーなどを着てきます。無精ひげも目立つし、接客より内部の事務的な仕事を任せることにしました。その結果が、冒頭のやり取りだったのです。

説明しても、自分の意見を強引に主張し譲りません。納得しないと、何度でも蒸し返します。周囲の職員も冷たい目を向けるようになりました。

  大事な資料も、古いと言ってすべて捨ててしまう photo by gettyimages

彼の様子、詳しく見てみると……

Aさんを心配した上司のBさんは、専門家に相談したいと、私たちのところへ来所されました。そこで、私は普段のAさんの様子をうかがってみました。

人には厳しく注意するのに、自分自身は出勤時間を守らず、遅刻の常習犯です。仕事中も眠いようで、ふと見ると下を向いて寝ていたり、昼休みに食事に出ていつまでも戻らないと思ったら、倉庫で寝ていたようだ、ということもありました。

相手の気持ちを推し量ったり、スムーズに会話することも不得手のようです。電話は出なくてもよいことになっていましたが、他の職員が不在の際に大事な得意先からの電話に出てしまい、その時の横柄で高圧的な物言いが、先方を怒らせてしまったこともありました。

  電話での横柄で高圧的な物言いが、得意先を怒らせてしまったことも phoyo by gettyimages

部長のおもしろくない話に、同僚が「結構なお話、ありがとうございました」と言ったところ、「くだらない話に、〈結構なお話〉とはなんだ!」と突然怒り出します。社交辞令がわからないようで、言葉を字義通りに受け取ってしまいます。

反論するとかえってエスカレートし、相手がだれであろうと、どういう場であろうと、罵倒するかのように自分の正しさを主張し、ときには殴りかからんばかりになります。

帰る時間は、仕事がたまっていようが、皆が大変であろうがお構いなしに、その時間がくれば、自ら手伝おうとすることもなく、さっさと帰ってしまいます。言われたこと以外に何をすればよいかわからないようで、周囲からは、普段の遅刻の多さもあって、ひんしゅくを買っています。

ひんしゅくと言えば、皆で食事に行ったとき、会食している人数で取り分けて食べる大皿料理なども、好きなものはひとりで人の分までどんどん食べてしまうようなこともありました。

大人になってから見つかる発達障害

Aさんの素行は、周囲から見るとかなり気になるのですが、本人はまったく気づいていないようです。なんとか自分自身に気づいてもらいたい、必要ならば専門の医療機関につなぎたい、そうした思いで係長のBさんが相談に来たのでした。

Bさんに「社会性と行動に関する基礎調査票(後述)」を記入してもらったところ、自閉スペクトラム症の特性が強く見受けられました。本人にも同行してもらい、気づきを促す必要があるようです。

自閉スペクトラム症は発達障害の障害のタイプで、『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)』による診断名

大人の発達障害には、子どもの場合とは違って周囲の支援だけでなく、発達障害という特性に自らも「気づき」、その特性を克服しようとする「変わろうとする意識」が必要になります。

職場や学校で「君は、言わなくてもいいことを言い過ぎる!」と叱責されたり、自分の子どもにイライラして、ついカッとなって手を上げることがある、といった経験はありませんか? どうにも自分とまわりがぎくしゃくしていて、うまくいかない背景に発達障害があるとしたら……。

ご自身や周囲の人でもしや、ということがあったなら、発達障害のことを考えてみてください。次ページ以降で、「大人の発達障害」と、自ら気づいて努力するコツについて、ご説明しましょう。