一般投資家はこの先、日本の不動産には手を出してはいけない

需要減少以外にもこれだけリスクが
大原 浩 プロフィール

IT化が一極集中を生む

一方、都市への集中はますます進む。IT化でどこでも仕事ができるようになったのは事実だが、実はIT化こそが都市化・一極集中化をさらに加速させる要因なのだ。これはハーバード大学教授で競争戦略論や一橋大学の「ポ―タ―賞」で有名なマイケル・ポーターも「クラスター」という言葉で述べている。

「クラスター」は難しそうな響きだが、簡単に言えば企業は地域的に集まるということである。例えば、商店街が典型的な例だが、個々の商店は競合関係にあるのにわざわざ同じ場所に集まって商売をする。商店街というクラスターが巨大な集客力を持っているために、競合の隣で商売をするデメリットをはるかに上回る効果を得ることができるのだ。

地域的に集約されているために、例えば商品の配送や色々な仕入れも(遠く離れた地域に一軒だけある店に配送するのは業者にとって非合理的である)円滑に行える。

IT企業がシリコンバレーなどの特定地域に集中するのにも明確な理由がある。ベンチャーファンドなどもシリコンバレーに集積するのだ。例えば都内のベンチャーファンドが東北の田舎町を訪問して投資先を開拓することはまずない。主婦が商店街に買い物に行くのと同じように、ベンチャーファンドも「ベンチャー街」に買い物に行くのだ!

また、今や公式情報はネットで瞬時に収集できる。しかし、すでにネットで公開されたような情報にビジネス上の価値は無い。ビジネスの収益に直結するのは「非公式情報」なのであり、この非公式情報は対面(face to face)でなければ手に入らない。

私はこの情報を「ところで……」情報と呼んでいる。本題の要件が終わった後、リラックスした雰囲気で「ところで……」と始まる話は十分耳を傾ける価値がある。

例えば不動産業者は頻繁に夜のクラブで飲んだりゴルフに行ったりするが、これにも理由がある。誰もが欲しがるような優良物件は、一般の販売ルートに乗る前の「ところで……」の段階で売れてしまうから、ネットには絶対に流れない。その情報の糸口をリラックスした雰囲気のクラブやゴルフ場の会話で見つけようと必死なのである。

もちろん、おいしい情報を気に食わないやつに教える人間はいないから、他の業者と友好関係を保つことも大事であり、その目的のために彼らはクラブやゴルフ場などの「クラスター」に集結するのである。

したがって、そのような「ところで……」情報が手に入らない一般投資家は、スタート時点から専門の不動産業者と比べてハンディを負っているのである。

それに対してネット取引が発達した株式市場では、巨大な機関投資家も一般投資家も基本的に同じ条件で株を売買できる。手数料率の問題はあるが、頻繁に売買しなければ問題は無い。

 

不動産の価値はブランド力

さらに付け加えると、不動産の価値は「隣に誰が住んでいるのか」によって大きく左右される。

典型的なのは、同じマンションに「広域指定暴力団」が引っ越してきた時である。近隣の不動産価値が下がるのは必然である。

逆に隣人が有名な芸能人や財界人であれば不動産価値は上がる。ビバリーヒルズや、東京の広尾、松濤(渋谷)、田園調布などが典型である。

特に地名が重要である。例えば「新富町」と聞いてもピンとくる人は少ないと思うが「銀座」の隣町である。しかし、「新富町」と「銀座」のブランドイメージの差は大きい。

また、「神楽坂」と「飯田橋」の差もある。JR飯田橋の駅周辺は開けていて利便性も高いのだが、多くの女性が「住所が神楽坂じゃなきゃいや!」と主張する。結果、同じ家賃なのに、飯田橋駅徒歩1分の物件よりも自転車で10分もかかる神楽坂のマンションを選び、雨の日は濡れながら通勤するのだが、それでも大満足なのである。

一般的な商品では、価格の安いものが価格の高いものに引きずられて値段が上がる傾向があるが、不動産はそうでは無い。価格が高い地域には「好ましい隣人」が集まってさらに価格が上昇する。それに対して価格が安い地域には「好ましいとはいいにくい隣人」が集結してさらに価格は下がる。

また、これからの不動産投資にはグローバルな視野が必要だが、その点においてもブランド、つまり地名は重要である。

例えば読者が米国の不動産に投資をする場合、ニューヨークの5番街は候補の1つになるかもしれない。しかしユタ州のナントカという町は気にも留めないだろう。

外国人が日本に投資をする場合も同じである、銀座や京都に投資はしても、四国のナントカという町に投資をすることは考えにくい。

日本や米国をはじめとして色々な国に色々な景気変動があるが、どのような不景気な時でも「世界のどこかに金持ちはいる」。したがって、銀座や京都のようなグローバルブランドの不動産価値は衰えない。

だから、不動産は基本的には価格の高いものに投資をすべきなのだが、銀座や表参道の投資は大きな単位である。しかし、だからといって不動産小口化商品やREITはお勧めできない。運営者の運営手数料が高く、その分、投資家の利益が食いつぶされるからである。