うつ・不安障害の人を職人に!京都・伝統工芸社長の「挑戦」

職人育成は健常者も障害者も同じ
なかの かおり プロフィール

細かい作業をコツコツできる人がいない

田川さんは京都市が2011年度に始めた「障害者雇用促進アドバイザー等派遣事業」を利用した。市によると、福祉施設から「ものづくりの企業を見たい」と希望があり、中村ローソクや竹細工の店を見学する機会も作った。

市はこの事業でアドバイザー等の費用として、企業に年間200万円までを助成する。2017年度は同じ事業で「京鹿の子絞」の会社が応募し、発達障害のある人を雇用した。今年4月、さらに市は伝統産業に焦点を当て、障害者の雇用や福祉施設への業務委託につなげるため、「伝福連携担い手育成支援事業」を始めた。

京都市の担当者は「後継者の確保が難しく技術の継承が危ぶまれる伝統産業と、細かい作業をコツコツと続けられてものづくりの仕事に適性のある障害者をつなげられるのではと考えました」と説明する。

伝統産業は家業が多いので、それ以外の人に継承するのも大事だ。手作業は職場の理解があれば、それぞれのペースに合わせてできる。これまでに筆者が取材したワインやチョコレート、胡蝶蘭づくりなどの現場で、知的障害や精神障害のある人が丁寧な仕事をしていた。

和ろうそくの絵付けをするAさん。集中力を必要とする細かい作業だ 撮影/なかのかおり

SNSで発信、売り上げ増の努力も

田川さんは「今後は障害者が働き続けられるサポートをする、売れるような仕組みを考えるなど、『出口』を市とも連携しながら探していきたい。入り口だけの用意では十分でないので」と指摘する。中村ローソクはSNSで情報を発信。修学旅行生や外国人観光客に和ろうそくの伝統を訴え、絵付け体験のワークショップを開き、全国の百貨店を回って出品するなど努力している。

「和ろうそくの価値が知られて売れれば、もっと障害者を雇えます。最近も、台風・地震の被害で停電や節電のニュースがありました。和ろうそくは普段は飾って楽しめて、非常時は明かりになります。キャンドルナイトなどのイベントでも使ってもらえたら。今年はもう一人、障害のある人を採用しました。私たちのような小さい店でも、成功例になればと思います」という田川さんの心意気が頼もしい。

筆者は今回、京都で何人かに取材する中で「表面的なアピールをしたいわけではない」という慎重さも感じた。「先進例として参考になるので紹介したい」と趣旨を説明し、東京での催事に足を運び、やり取りする中で少しだけ信頼を得られたかもしれない。そうした伝統へのプライドがある京都で、福祉制度から助成の出る「作業所」とも違い、障害のある人を雇用し職人として育成するのは思い切った試みだ。

伝統産業の世界で収益を上げ、技術を継承していくには課題もある。伝統産業の品物は、素晴らしい技術が使われ、良いものであるのは一般の私たちにもわかる。だが高価なものも多く、現代の生活で実際に使うか、狭い家屋で楽しめるかと考えると、ぜいたく品や贈答用と受け止めがちだ。具体的な売り上げに結び付ける努力も必要だろう。

筆者が昨夏に訪ねたドイツでは、職人の資格制度がある。障害者も訓練を受け、技術を使って働き、デザインや品質の面でも妥協しないという。京都で伝統を継承しつつ、障害者が誇りを持って働ける仕組みが定着すれば、日本の各地で参考になると思う。