なぜ「いじめ」はなくならないのか?春名風花さんがたどり着いた結論

みんな「逃げろ」と言うけれど…
夏生 さえり プロフィール

彼女を支えてくれた人間関係

3歳からブログ、9歳からはツイッター。幼い頃からインターネットを通じてたくさんの大人と触れ合い、炎上も経験した。彼女はそのことに対し、どんな思いを抱えていたのだろう。

「わかりあえない人間がいるって、小さい頃はわからなかった。それで何度もぶつかって、炎上することもありました。大人に失望しそうになったこともあります。

たとえば、アンチの方が『死ね、クソガキ』と言うと、ぼくの味方であるフォロワーが『お前こそ死ね』って言うんです。もうなんといったらいいかわからなくて……。

大人同士が喧嘩しているっていうのは、当時は結構な衝撃でした。時には殺害予告もされたし、ツイートに関しても本当は大人が書いているとか言われましたね。悔しかったです」

 

しかし、彼女を支えてくれたのは両親だった。

「家族がぼく以上に怒ってくれたんです。傷ついたら、怒ってくれる人がいる。それはすごく支えになりました。ひどいことを言われても、もっと大事なひとたちが他にいるとわかっていた。だから、あんまり重要視しないでいられたと思います。

今では、『わかりあえない人間がいる』って気づけたことが本当に良かったと思っています。『ある話題ではどうしてもわかりあえなくても、他の話題だと気が合うこともある。人間は見える部分だけではなく、多面的なんだ』って気づくこともできました」

だいぶ傷ついたんじゃないかなって思いながら見ていました。私がそんな風に正直に伝えると、少しだけ目を伏せて「なんも感じなかったわけじゃないです」と小さく囁くように教えてくれた。両親について、彼女はこう語る。

「ぼくには言わなかったけれど、父は母に『大丈夫なの?』って心配して聞いていたみたいです。

母は厳しいことを言う時もありましたが、基本的には『信頼しているから、細かいことは言わない』っていう姿勢だったので、信頼を裏切っちゃいけないと思っていました」

昨今のインターネットの進化はめまぐるしい。子どもが見慣れないツールを使い出し、知らない人と簡単に関われてしまう。親としてどんな風に振る舞えばいいか、悩んでいる人も多いだろう。

「子どもの中で流行っているツールは、将来重要なツールになることもある。子どもに教えを請いて一緒に勉強して、危険性をきちんと理解してもらったあとは見守りたい。触れさせないのではなく、小さい頃から触れてもらって守れる範囲の失敗をいっぱいしてもらいたいです」

春名さんはツイッターを使う上で、両親に「助けてと言うまで助けないで」と伝えていたそうだ。著書『少女と傷とあっためミルク』の中にもこんな一文がある。

「『親はいったい何をしているんだ』。そんなことを言われながら、下唇をかんで、こぶしを握りしめて、手を出さず、だまってぼくが転び続けるのを見ていたこと、ぼくは知ってるよ」

インタビューをするまで、どうして彼女がここまでまっすぐでいられるのかをずっと不思議に思っていた。でも、答えは簡単だった。

彼女の身体には愛が詰まっている。何かに簡単に負けたりしないほどの愛情を持って、彼女は社会と向きあっているのだ。