「ヘビが怖い!」の恐怖心が霊長類の進化に大きく関わっていた

酒席で絶対ウケるおもしろ雑学 蛇編
齋藤 海仁 プロフィール

毒ヘビにもリスクはある

「ヘビには毒のあるやつとないやつがいますけど、毒ヘビのほうがやっぱり有利なんですか?」

「よく聞かれるんですが、そうとも限りません。毒ヘビには2つのリスクがあるんですよ」

 

ひとつは相手を噛んでもすぐに死なないことだという。

毒があるとはいえ、噛んだら獲物が即死するわけではない。すると、返り討ちにあう恐れがある。そのため、ヒット&アウェイという戦略をとるヘビがいる。彼らは毒牙で噛んだあといったん獲物を放し、臭いをたどって追いかけていって、獲物が倒れたのを確認してから飲み込む。毒の使い方としてはそのほうが安全だ。

もうひとつは毒が効かない場合があること。ヘビを食べる動物には毒に耐性を持つ種類がいるという。こうなると毒が頼みの毒ヘビとしてはまったくお手上げだ。あ、そもそも手はないか。

「毒ヘビのリスクはわかりました。じゃあ、無毒のヘビはどうやって獲物を捕まえるんですか?」

「噛んだ瞬間、ぐるぐると素早く巻き付くんです。体全体に巻き付かれてしまったら、相手はもうどうにもなりません。ヘビの体型を実にうまく利用した捕食の仕方だと思います」

巻き付いたヘビは獲物が息を吐いたりもがいたりするたびにどんどんきつく締め付けてゆく。すると、獲物は窒息するか、心臓が圧迫されて血液の循環が止まるかして死に至るのだそうだ。

「毒ヘビには筋肉があまり発達していないものが多い。ですから、毒ありと毒なしでは攻撃パターンが全然違っていて、必ずしも毒ヘビのほうが有利とは言い切れないんですよ」

ってことはコブラツイストはウソだったのか!

そう聞いて、「毒蛇温室」でわずかながら展示されている無毒のシロヘビ(アオダイショウのアルビノ)とアメジストニシキヘビを見てみると、確かに体にぷりっとした張りがあって筋肉質っぽかった。無毒のヘビはマッチョ派なのだ。

毒をもつクサリヘビ科。顔は禍々しいが、身体はスマート
無毒のボア科。獲物を絞め殺すため、極太の巨体をもつ

そんなマッチョ派の代表といえばやっぱり大蛇。そこで、続けて「大蛇温室」を覗いてみた。

ニシキヘビやアナコンダなどの横綱級がそろい踏みだ。これらはすべてボア科である。飼われている個体は平均すると体長3、4メートル前後。「毒蛇温室」のヘビと比べると明らかに長く、何より太いのに驚く。

ちなみに、『最新ヘビ学入門 90の疑問』(平凡社)によれば、これまでに発見されたヘビの世界最長記録はアミメニシキヘビの10.1メートル(11.5メートルというアナコンダの記録があるものの怪しいらしい)。

このサイズになると、胴回りはゆうに1メートルを超える。人間ひと巻き1メートルなら、10回は巻ける。余裕で全身を巻かれてしまうだろう。毒も嫌だけど、こんなのに巻き付かれて死ぬのも嫌だなあ。