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大災害で家を失う前に、絶対知っておきたい4つの制度

「災害復興法学」で考える住宅ローン

日本全国で次々と大災害が発生したこの夏、大地震や土砂崩れ、水害で、全壊する家の映像が何度流れたことか・・・・・・。購入した自宅にもう住めなくなったら生活はどうなるのか? ましてや住宅ローンが残っていたらどうなってしまうのか?

被災者を救う法律の整備は実はまだまだ進んでいない。東日本大震災、熊本地震、広島土砂災害などの被災者からの法律相談約5万件のデータ分析を行い、「災害復興法学」を提唱する弁護士が、「被災する前に知っておきたい救済制度と法律」を解説する。

被災とは日常生活の断絶がおこること

自然災害による被害といえば、建物被害の数、津波等の浸水面積、犠牲者や行方不明者の数など、目に見える物理的な破壊や犠牲を指すことは疑いのないことだろう。私自身、東日本大震災がおきた直後には、映像や写真にとてつもない衝撃と悲しみを受けた。

ところが、命が助かり、避難生活を送ることになった被災者を襲う困難がほかにもある。それは「生活再建」への不安である。破壊されてしまった日常生活を、どうやって取り戻すのか。住まい、お金、支払い、仕事といった、あたりまえの日常生活が、巨大災害で一挙に裏返り、苦しみと困難になってのしかかっていくのだ。

「自宅が土砂で流された。ローンが残っていたが当面は支払うことができない。どうやって生活を、住まいを再建すればよいのか見当もつかない」。絶望的ともいえる声。それらを拾い上げ、少しでも希望の光を灯すことが「生活再建」の第一歩となる。しかし、いったい何から始めればよいのか。みなさんはご存じだろうか。

大災害発生後、被災者のかかえる問題でもっとも深刻なものが、「住宅ローンが支払えなくなった」という声だろう。家を失ったのにもかかわらず、1000万円超えるローンが残る場合もしばしばある。

もし、たとえば自分の住む地域で大災害が起こって、住宅ローンを抱えたまま、購入した家に住めないことになったら、どうなってしまうのか? 

現状の被災者救済制度をまず説明しよう。

住宅ローンはどの程度残るのか?

ローンが残っている人を救済する制度は、通称「自然災害債務整理ガイドライン」。正式名称を「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という。

「災害救助法」の適用があった自然災害の影響で、住宅ローン、リフォームローン、事業ローンなど、もともとの借金を弁済できなくなった「個人」が利用できる。借金が財産を超過して「破産手続」などをしなければならない状態でも、法的な手続によらずに、金融機関と債務者との合意で、債務整理を行うためのルールと考えてもらいたい。

破産手続によらないということは、ブラックリスト(信用情報)への登録がないので、新たに次の借り入れをすることもできる。また、現預金500万円、後述する被災者生活再建支援金や災害弔慰金などについては支払原資として算入しなくてもよい。それなりのまとまったお金を丸ごと残すことができる。

そして、残せる以外の財産に相応する債務さえ支払えば、それを超える残りの債務は全額免除できるのだ。

制度の利用のためには、金融機関へ「ガイドラインを利用したい」と申し出ることが必要になる。金融機関は、借入先、借入残高、年収、資産(預金など)を聞き取り、手続きの開始に「同意」をする。

現在のところ原則として年収730万円までなら制度利用を拒絶されない扱いになっている。ここから具体的な返済計画や、残す財産・処分する財産などを調整していく。

手続きが開始になると、地元の弁護士会に所属する弁護士が「登録支援専門家」として紹介され、無料でその後の手続きをサポートするという制度設計になっているのも特徴だ。

 

実はこの制度が整備されたのは、ごくごく最近、2015年12月のことだった。

きっかけは東日本大震災。弁護士たちが、無料法律相談活動をするなかで被災者から聴いた声がスタートだった。