キハ150ディーゼルが駆け抜ける(photo by iStock)

車両鉄中央線派、音鉄葬式派、撮り鉄SL派……あなたが支持するのはどのセクト?

「鉄」のシンポジウム・前編
車両鉄中央線派、踏切鉄、サボ鉄、撮り鉄SL派……新宿駅に「鉄」のセクトたちが大集合してシンポジウムを開催した!? 「鉄道の日」を1週間後に控えた本日は、根強い人気を誇る原武史氏の連載「鉄道ひとつばなし」(読書人の雑誌『本』)から、『鉄道ひとつばなし』シリーズ(講談社現代新書)には収録されていない特別版(前編)を公開します!

新左翼と同様、セクト化が進んでいる

一九六八(昭和四十三)年十月、新宿駅。

羽田事件で山崎博昭が死亡して一周忌に当たる十月八日、まず革マル派や社青同解放派が線路上に座りこみ、構内をデモした。続いて中核派、社学同、ML派などが東口で集会を開くため集結してデモを始めた。

国際反戦デーに当たる十月二十一日には、中核派、ML派、第四インターなどが集まり、駅構内を徹底的に破壊した。いわゆる騒乱事件である。

革マル派、社青同解放派、中核派、社学同、ML派、第四インターは、すべて新左翼のセクトの名称であった。新左翼は、既成左翼の日本共産党=民青に対立するという点では一致していたが、四分五裂を繰り返し、セクトがさらにセクトを生み出していた。ML派は社学同マルクス・レーニン主義派、第四インターは社青同国際主義派の別名であった。

それから四十二年を経た二〇一〇年十月、新宿駅に集まってきたのは、すっかり影の薄くなった新左翼ではなく、「鉄」のセクトであった。かつては人知れず活動していた「鉄」も、数が増えるとともに公然と活動するようになっている。そしてかつての新左翼と同様、セクト化が進んでいる。

近年では、一部のセクトの目にあまる行動が、社会から非難を浴びている。それを他のセクトが、「鉄」全体のイメージ低下につながるとして厳しく批判する。このままでは、セクトどうしの内ゲバに発展しないとも限らない。

危機感を抱いた私は、かつての「政治の季節」の舞台であり、乗降客数が日本一多い新宿駅に、すべてのセクトを集めて会議を開こうと考えたのである。しかし、マニア用語に全く通じていないゆえ、議長がつとまるかどうかは、はなはだ心もとない。

西ミツ、西ムコ、西トタ

ダイヤ鉄 よん・さん・とおー。

議長 何ですか、あなたは。「ぎちょー」と叫ぶ国会の議事進行係みたいな声を出して。

ダイヤ鉄 四三・十だよ。あんたが新宿駅で会議を開こうと思ったきっかけが一九六八年十月にあると言ったんでね。西暦でなく元号で言い換えたんだよ。つまり昭和四十三年十月だ。日本国有鉄道の歴史でも、最も輝かしいダイヤ改正が行われたのが、この月だった。これを我々は「よん・さん・とお」と呼んでいる。

議長 しかし、十月八日も二十一日も、国電はマヒ状態だったじゃないですか。これじゃあ、せっかく改正したばかりのダイヤも台なしだったでしょう。

ダイヤ鉄 あれ、そうだったっけな。

車両鉄中央線派 ダイヤ鉄はスジにしか興味がないから困るんだよ。十月二十一日に新宿駅で何があったか知っているか。我々の心から愛する101系が、あいつらにめちゃめちゃに破壊されたんだ。ついでに言うと、後継の201系も最近なくなり、オレンジ色の電車はついに中央線から消えてしまった。

議長 スジとか101とか201とか言われても、よくわかりませんが……。

車両鉄中央線派 そんな基本的なこともわからんのか。八ミツと八ムコと八トタの違いについて説明しようと思ったんだが、これじゃあ通じそうにないな。まあかまわん。国鉄時代、中央線の101系や103系には、西ミツ、西ムコ、西トタの三種類があって、私は101系西トタの昭和三十四年近畿車両製サハに乗るのが一番好きだったんだ。

議長 ああ、やっとわかりました。車両の右下や左下にある表示ですね。総武快速線や横須賀線には千マリと書かれた車両がよく走っていましたなあ。あれを千住真理子の略称だと思い込んでいたのは、私が東急沿線の住民だからでしょうか。

只見線と紅葉(photo by iStock)

美しかった客車のサボ

車両鉄東急派 そうでしょう。議長が四十二年も前の出来事にこだわって新宿駅まで来させられたが、我々の牙城たる渋谷でやってほしかったですな。いまや中央線でも201系がE233系にすべて置き換えられたように、オールステンレスの車両が主流になっている。その先鞭をつけたのが、わが東急ですぞ。5200、6000、7000、7200、8000、8500と、輝かしき歴史がある。

8500はデビューしてもう三十五年以上もたつのに、まだ現役でがんばっているし、インドネシアでも活躍しています。さすがに鉄道友の会からローレル賞をもらっただけのことはある。

方向幕鉄 しかし、あの方向電光掲示はいただけない。やっぱり回転が楽しめる方向幕でないと。めったにお目にかかれない「急行鷺沼」の方向幕が現れただけで幸せな気分になる。

サボ鉄 いやいや、方向幕でもダメだ。やっぱりサボじゃないとね。「〇〇行」とか、「〇〇⇔〇〇」と書かれた金属製の板のことを、サイドボードと言ったんだ。サボはその略称。