# 性的マイノリティ # LGBT

同性カップルに「生命保険」開放はよきニュースか?

当事者ニーズと社会の熱気のはざまで
永易 至文 プロフィール

保険会社は売りたいかもしれないが…

FPとしては、子育て資金が不要な性的マイノリティの課題はまず自分の老後資金の形成であり、貯蓄・運用・保険など分散を心がけ、元本割れや解約リスクのある運用・保険のまえにまず貯蓄の習慣をつけるよう説くのが、教科書的な「いろは」です。

また、将来不安から保険加入を希望しても、HIV陽性者(ゲイに多い)やホルモン投与をしているトランンスジェンダーの人は、もともと保険加入ができません。

 

保険に加入する現役世代が減り、保険金を受け取る高齢世代が増え、さらにマイナス金利にあえぐ保険各社が、これまで門を閉じて来た同性カップルに注目するのは当然のビジネス的判断ですが、生命保険に対する当事者ニーズは意外に低いのかもしれません。しかし、保険各社の「門戸開放」を好ニュースと伝える記事には、意外にこうした指摘を見かけることはありません。

このことを相談や講座などでお話すると、むしろ当事者は「やっぱりそうですよね」と納得するのが印象的です。保険に入らなければダメだと思い込んでいたのが、違う考えもあると背中を押してもらえて安心した、という感じです。

保険料払わせてもらって「家族」だと喜ぶのもオカシイね、と水を向けると、苦笑いもされます(入院・手術に備える医療保険についてもニーズが乏しいことは、稿を改めて紹介します)。

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性的マイノリティならではの生命保険活用法もある

一方、性的マイノリティならでは(?)の生命保険活用法はないでしょうか。私の相談経験から考えてみました。

1)万一時にお金に困る人がいる

当事者のなかには異性と結婚していた時期があり、子どもがいる場合もあります。子どもが成長するまでは生命保険や学資保険に加入するのは、異性カップル同様おすすめできます。ただ、いっしょに子育てするパートナーが受け取り人だと先述のように税制上、不利ですので、受取人は子ども本人とするとよいでしょう。子の財産管理をさせるためパートナーを未成年後見人に指定する遺言作成も同時に検討しましょう。

また、同性カップルでも一方が稼ぎ、他方が専業主婦/主夫をする場合は、稼ぎ手の死亡に備えた生命保険加入もよいでしょう。

2)遺留分対策

同性婚がない日本で、自分名義の住宅や預貯金をパートナーに相続させるには、遺言を作成することは対策の基本知識ですが、親が存命のあいだは遺留分請求が心配ということもあります(親には遺産の3分の1に遺留分あり)。

請求に応えるだけの預貯金がない、パートナーにも現金を残したいなどの場合、親受け取りの掛け捨て保険に加入し、それで納得してもらうということも考えられます(親との関係がよければ不要)。親が他界後は即、解約します。

3)住宅ローン保障に

同性カップルの一方が名義人となって住宅を買い、パートナーが家庭内でローンの半額を負担することがありますが、パートナーが急死するとローン支払に困難が生じます。そこでパートナー受け取りの生命保険の出番です。名義者本人の死亡時は、団体信用生命保険が降りて完済されます。

4)自分の老後資金として

保険はあくまで自分受け取りを前提に考え、そのさいに満期以前の死亡時受取人はパートナーにできる商品を選ぶのも一案です。もちろん老後には保険一本で備えるのではなく、バランス良いポートフォリオの形成が大切ですが。

ちなみに、損害保険(自動車や自転車、ペットや旅行など)は状況に応じて加入するメリットがありますし、自動車事故保険で同乗のパートナーを配偶者と同様に適用するサービスは歓迎される動きです。