# 性的マイノリティ # LGBT

同性カップルに「生命保険」開放はよきニュースか?

当事者ニーズと社会の熱気のはざまで
永易 至文 プロフィール

これはHIVがからんだゲイ男性カップルの相談でしたが、女性カップル、高齢おひとりさま、トランスジェンダー……生身で生きる性的マイノリティのうえには、多様な背景や課題が折り重なっています。

それを一つひとつほぐし、現行の法律や制度を活用してとりあえずの解決策をさぐるお手伝いをするのが、私の役割です。

同性カップル向け保険は、じつは税金面で「不利」

近年、同性パートナーを受け取り可とする保険会社がつぎつぎ名乗りをあげたニュースに、日本はLGBT対応が前進した、社会が動いた、と感じている読者も多いでしょう。

日本では長らく保険会社の内規で受取人指定は二親等以内の親族に限定され、法律上の親族に該当しない同性パートナーを指定することができませんでした。保険加入から排除されていることは、同性カップルの長期的ライフプランのネックとされてきました(ただし、郵便局の簡易保険=現・かんぽ生命はもともと二親等規定がなく、非親族を受取人に指定することは可能でした)。

ところが、2015年に東京の渋谷区や世田谷区で同性パートナーを自治体が公認する制度が始まると、同性パートナーを指定可とする保険会社が名乗りをあげました。そのさきがけはライフネット生命で、従来から実施していた事実婚夫婦の受取人指定を同性パートナーにも拡大したものでした(独自の書式でパートナーであることを確認)。同社は、後発・ネット専業の保険会社でしたが、その先進性は注目を集めました。

 

その後、国内大手も含め、要件(自社書類でOKとか自治体証明が必要など)に違いはあれど、同性パートナーを受け取り可とする保険会社がつぎつぎ登場し、保険加入することで「これで家族と認められた」など当事者にも歓迎されています。

ただし、会社は動いたものの、社会(法律)に変化がないため、この保険にはつぎのような「不利」があります。

①年末調整や確定申告での「生命保険料控除」は、二親等内親族が受取人の保険に限るので、同性パートナー受け取りの保険では生命保険料控除は受けられない

②死亡保険金への非課税限度額の適用(法定相続人数×500万円)も、二親等内受け取りに限るので、全額が相続税計算に繰り入れられ、相続税が課税される場合がある。

また、冷静に考えてみると、同性カップルの場合、自分が死んでもパートナーも共稼ぎだったり小さな子どもがいるわけでないなど、お金に困る人がおらず、生命保険に入るニーズが乏しいともいえます。

保険料に払うお金があるなら、存命中に二人で活用したほうがいいかもしれませんし、遺産は遺言で渡す方法もあります。