ゲイの行政書士として、FP技能士として、おなじ性的マイノリティの〈暮らし・お金・老後〉の相談に応じる事務所を開いて約5年になります。
行列ができるほど相談者が多いというわけではありませんが、当事者の生活にかかわるご相談を受けたり、同性カップルのパートナーシップ保証のための公正証書を作成してきました。遺言を作成し、死後の片付けまでお引受けしている高齢一人暮らしのゲイのかたもいます。
寄せられるご相談には、「保険」にかんするものも目立ちます。同性パートナーを受取人にできる保険のお問い合わせはいまもありますが、実際の相談案件としてはもう少し入り組んだ話になります。
最近もこんなご相談がありました。
相談者は同性パートナーを受取人にできる保険を探していましたが、それはご自身のHIV感染がわかったことが契機でした。
さらに相談者のパートナーは外国人で、相談者が海外へ赴任中に知り合い、そのかたもHIV陽性とのことでした。収入の少ない外国人パートナーを将来は日本へ呼び寄せ、自分に万一のことがあった場合には保険金をパートナーに受け取らせたい、どうしたらいいだろうか、というのです。
あとでも述べますが、現在、同性パートナーを受取人にできる保険会社は、ずいぶん増えました。しかし、こういう相談ともなると、某某の保険会社は大丈夫ですよ、とご案内するだけではすまない問題になります。いろいろな課題が、このご相談には積み重なっているからです。
たとえば、
◆HIV陽性がわかってから、そもそも保険に入れるのか。
◆同性婚も配偶者ビザもない日本で、外国人のパートナーを呼び寄せることはできるのか。
◆医療の発達でHIVは死ぬ病気ではなくなったが、まだ完治法がない。生涯の医療や介護をどう手配するのか。大病院が多いHIV拠点病院が遠方の場合、高齢期も通院は確保できるのか。社会保障制度はなにが使えるのか。
◆高齢期に仕事ができなくなったときの収入のめどや、それまでの貯蓄をどう形成するか。
◆そのまえにHIVや同性パートナーを抱えながら、日本での就労状況はどのようなものになるのか。
◆同性婚もない日本で、同性パートナーとの関係を立証したり、互いに世話したり、万一時は相手名義の財産を相続することは可能なのか(しかも、この相談の場合、外国人)。
◆親族や近隣と、どういう関係を築くのか/築かないのか。
◆保険に加入し、パートナーを受取人にすることで、なにに備え、なにを得たいと思っているのか。自分(たち)の本当のニーズはなにか。それは保険で備えるのがよいのか、ほかに方法はないのか。